だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「そりゃあ姫さんが可愛いからっすよ。それ以外に理由あります?」
「かわっ……!?」

 イケメンに面と向かってこんな事を言われて、照れない筈がない。顔が熱くなるのを感じ、慌てて顔を隠しながら逸らす。
 彼等が褒めてるのがアミレスの容姿であると分かっていても、照れるものは照れるのよ!

「とは言ったものの。本当の目的は……監視っすかねェ」

 緊張で荒れる鼓動が途端に落ち着いた。顔から熱が引き、ぎこちない動きで師匠の方を向く。

「…………監視とは?」
「うーん、ヒトがいない間に竜に立ち向かうなんて予想以上に無茶な事してたお姫様がまた馬鹿な事しでかさないように? 見ておこうかなーと?」

 怖いくらい笑顔の師匠が強い語気をぶつけてくる。何でそんな過去一キラキラ眩しい笑顔なんですか師匠! 語尾が上がってるのも凄く怖いです師匠!!

「スミマセンデシタ……」

 小声で絞り出すように謝ると、指と指の隙間から見える師匠は「何がっすか?」と笑顔で詰め寄ってくる。あぁ、これもうマジで怒ってるやつだ……。
 それでも怖くて手を顔からどけられずにいると、師匠が私の手首を掴み、無理やり手をどかしてきた。
 ひぇっ怖いから師匠の顔を直視したくな──。

「…………顔良……」
「え?」

 互いの息がかかるぐらいの至近距離に見えた師匠の顔が相変わらず欠点一つない美しい顔だったあまり、私は無意識にこぼしてしまっていた。
 ハッと息を飲んだ時には既に遅し。師匠なんてポカーンとした顔で固まっている。

「ごめんなさい、その、あまりにも師匠の顔面が整っててつい……あのあれ! 芸術品を見て『綺麗〜!』って言うのと同じようなものなの! だから決して悪口とかでは無いの!!」
「顔面……」

 師匠が困惑したような顔で見つめてくる。しかし程なくして考え込むように目を伏せた。
 えぇ……師匠の睫毛長っ……精霊さんの美しさって本当にバグってるわぁ…………。

「ふむ、まぁ要するに姫さんは俺の顔が好きなのかァ。なるほどねぇこりゃいい事聞きましたわ」

 パッと顔を上げた師匠はまたもや綺麗な笑みを浮かべていた。しかしどこか黒いその笑顔に、私は計り知れない恐怖を覚えた。

「俺の顔が好きならきっとシルフさんの顔も気に入るだろうしなァ、いやー安心安心」
「シルフの顔…………あっ、そうだ。私の知ってるシルフと師匠は本当の姿じゃないって聞いたんだけど、それって本当なの?」
「えっ? ……何でそんな事知ってんすか?」
「ひ、人から聞いて……」

 嘘です正確には悪魔から聞きました。でも悪魔と仲悪い精霊さんにそんな事言えないので……勿論隠しますとも。
 師匠の言葉から悪魔に言われた事を思い出し、それが本当なのか裏取りしようと尋ねると、師匠が訝しげにこちらを睨む。
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