だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
 だから必要な時は名前呼べば一発っすよ! と師匠はサムズアップする。
 てか今魔剣って言った? 確かに不思議な剣だとは思ってたけどまさか魔剣だったなんて!! 魔剣と言えば世界中探しても数える程しか無いって噂の、れっきとした古代の魔導兵器《アーティファクト》だ。

 その一つ一つに上級魔法を超える固有能力が備わっており、ものによっては国宝、伝説の武器として扱われる程。
 古代にはもっと多くの魔剣があったそうなのだが、百年程前に竜種の討伐で凄まじい量の魔剣を犠牲にした為、現代においては簡単に数えられる程しか存在が確認されていない。
 極夜はそもそもフォーロイト帝国が王城の地下に長くに渡り封印されていた代物であり、フリードルが十五歳の誕生日を迎えた際に封印を解く──かの有名な聖剣のようにその魔剣を抜いた事により、フリードルの物となった。…………と、公式ファンブックに書いてあった気がする。

 魔剣としての能力は絶対零度。斬ったもの全ての温度を消滅させる。フリードルはこの極夜を携え、ハミルディーヒ王国の戦士達を次々に惨殺し、ついでにアミレスを斬殺した。
 ちなみに魔剣は所有者が意図して使わない限り固有能力も発動しないらしい。だから今まで私の愛剣には何も起きなかったのだろう。
 さて、そんな極夜と同じ価値を持つ魔剣が今、私の手元にある。
 衝撃の事実に思わず震える手。白夜に視線を落として固唾を飲むと。

「その剣の能力は重量操作で、出来る事は軽くする事と重くする事だけっすね。まぁ簡単に言えばアレっすよ、姫さんの意思一つで撫でられたような軽い一撃にもなるし雷に貫かれたような重い一撃にもなるって事ですね」
「そんな便利な……」
「能力試しに一試合やりますか?」
「っ!」

 呆然としている私の肩を叩いて、師匠がニッと笑う。
 それに何度も頷いていると、シルフやリードさん達が止めようとしたのだが……その時にはもう師匠の手を引いて自ら修練場の中心へと走って行っていた。
 皆の制止も聞かず、私は「軽く試合するだけだから!」と告げて白夜を構える。
 師匠もまた、どこからともなくお気に入りらしい剣を取り出して構えた。
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