だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「……なぁ、アミレス。教えてくれないか? どうしてお前は、あれだけの無茶をしたんだ?」

 マクベスタの翠色の瞳に、ぽかんとする私の顔が映る。
 突然そんな事を聞かれるとは思っていなかった。どうしてあんな無茶をしたのか…………これに関しては、事前に知っていたからとかそう言う理由じゃない。

「──約束したでしょ。貴方の帰る家は守ってみせるって」

 約束は守ったわよ、と自慢げに笑ってみせる。本当に、最初からこれだけだったのだ。
 ゲームでとても辛そうに『もう帰る家が無い』と語るマクベスタを何度も見て来たから、現実でまでもそれを見たくなかった。
 だからマクベスタの帰る家を、彼の愛する国を守りたかった。ただそれだけなのだ。
 そこに大層な理想や理由なんてない。これはただの私のエゴなのだから。
 すると途端にマクベスタの瞳が見開かれた。

「……っ、そん、な……こと、で……ッ」

 今にも泣き出しそうな顔に震える唇で紡がれる言葉。鬱々とした表情のまま俯き、マクベスタは心臓の辺りを強く握り締めて体を僅かに震えさせた。

「…………っ!!」
「どうしたのマクベスタ!? どこか具合が悪いの……?!」

 しかしマクベスタは首を横に振るだけだった。どうしたらいいのか分からず、ただただ彼の横で狼狽える。
 俯き僅かに震えるマクベスタから「……フーッ……ぁ……!」と嗚咽のようなものが聞こえて来て、更に不安になる。
 やっぱりリードさんに頼んで診てもらった方が! と立ち上がると、手首をマクベスタに掴まれて。

「……だい、丈夫……だ。これは、オレの、最悪な……心の問題だから……っ」

 必死に私を引き止めようとするマクベスタ。しかしその顔はブルーベリーを塗りたくったかのように真っ青で、目から涙も溢れていた。
 どこからどう見ても大丈夫じゃない。大丈夫じゃないのに……どうしてマクベスタは虚勢を張るのか。

「…………部屋に、戻って休む。すまない、迷惑を……かけて。本当に、すまない──……」
「えっ、ちょ、ちょっと!?」

 ようやく手を離したかと思えば、マクベスタはそれだけ言い残して覚束無い足取りで自室へと戻って行った。
 追いかけようにも「一人にさせてくれ」とマクベスタに制止されてしまい叶わず。
 結局、遠ざかるマクベスタの弱々しい背中を見つめる事しか私には出来なかった……。
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