だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「王子サマぁ〜、いかがでしたか我々との訓練は? あまりにも王子サマが弱すぎて、まるで我々が集団で王子を嬲ったように見えてしまうではありませんか!」
「俺達はただ王子と訓練していただけなのにな!」
「まさか王子がこんなにも弱いだなんて! まったくの誤算だ!!」
「ははははははは!」
大人達は何度も訓練だと強調した。別にそのような予防線を張らずとも、フォーロイト帝国がわざわざ我が国相手に配慮する事などないから安心すればいいのに。
どれだけオレを虐げようと、彼等が罰せられる事は無いだろう。誰しも、弱小国からゴマすりの為に寄越された王子より、この国で騎士として戦う彼等の言葉を信じるだろうから。
ひとしきり虐げて満足したのか、大人達は「王子サマ、それではまた明日」と卑しい嘲笑を浮かべてここを後にした。
ボロボロになった体を起こし、執拗に蹴られた腹を押さえる。
「…………っ、あのフォーロイト帝国の騎士が、まさかここまで腐敗してるとは……」
強きをくじき弱きを救う。民の良き営みを守る為に在る騎士という存在が、まさかこのような矮小な行いをするなんて……とオレは密かに失望していた。
そもそもこの時間、普通ならば騎士としての仕事中なのではないか? そうでないにしても普通は己の実力を高める為に鍛えるものだろう。しかも全員そこそこ酒臭かったぞ。
何だあの大人達は……寄って集って子供を囲って嬲り、それにこんな真昼間から酒浸りだと? フォーロイト帝国の騎士に憧れていたオレの幼気な心を返して欲しいぐらいだ。
「いって…………最悪だ、アミレスとの約束にかなり遅れてしまう……」
はぁ、と大きくため息をついて立ち上がる。愛剣を手にふらつく足取りで彼女が待つであろう特訓場に向かうと。
「遅かったわねマクベスタ、先始めちゃってるわ……よ……」
既に剣を手に持っているアミレスが、オレの姿を見てぎょっとしていた。……どんな表情でも愛らしいな、彼女は。
「どうしたの?! 全身ボロボロじゃない!」
「……あー、その……来る道に馬がいてな」
「馬!? まっ、まさか蹴られたとか……? とと、とりあえず早く手当てしなきゃ!!」
「大した事ではないんだ、見た目程痛みも傷も無いから心配するな」
「心配するなって方が無理あるわよ……?!」
アミレスはそう言いながらハイラさんを呼びに走り出した。その間、オレは師匠と二人きりで取り残される。のそのそと近づいてきた師匠はオレの額目掛けて中指を親指で弾き、中々の打撃を与えてきた。
額を押えながら師匠を見上げると、師匠はじっとこちらを見下ろしていて。
「なんで何もしなかったんだよ」
「……何の事ですか」
「純粋な姫さんならともかく、本気で俺を騙せると思ってんのか」
どうやら師匠には嘘が通用しなかったらしい。……本気で騙せるとも思っていなかったが。
これは仕方のない事なのだと、諦めの面持ちで師匠を見上げて。
「俺達はただ王子と訓練していただけなのにな!」
「まさか王子がこんなにも弱いだなんて! まったくの誤算だ!!」
「ははははははは!」
大人達は何度も訓練だと強調した。別にそのような予防線を張らずとも、フォーロイト帝国がわざわざ我が国相手に配慮する事などないから安心すればいいのに。
どれだけオレを虐げようと、彼等が罰せられる事は無いだろう。誰しも、弱小国からゴマすりの為に寄越された王子より、この国で騎士として戦う彼等の言葉を信じるだろうから。
ひとしきり虐げて満足したのか、大人達は「王子サマ、それではまた明日」と卑しい嘲笑を浮かべてここを後にした。
ボロボロになった体を起こし、執拗に蹴られた腹を押さえる。
「…………っ、あのフォーロイト帝国の騎士が、まさかここまで腐敗してるとは……」
強きをくじき弱きを救う。民の良き営みを守る為に在る騎士という存在が、まさかこのような矮小な行いをするなんて……とオレは密かに失望していた。
そもそもこの時間、普通ならば騎士としての仕事中なのではないか? そうでないにしても普通は己の実力を高める為に鍛えるものだろう。しかも全員そこそこ酒臭かったぞ。
何だあの大人達は……寄って集って子供を囲って嬲り、それにこんな真昼間から酒浸りだと? フォーロイト帝国の騎士に憧れていたオレの幼気な心を返して欲しいぐらいだ。
「いって…………最悪だ、アミレスとの約束にかなり遅れてしまう……」
はぁ、と大きくため息をついて立ち上がる。愛剣を手にふらつく足取りで彼女が待つであろう特訓場に向かうと。
「遅かったわねマクベスタ、先始めちゃってるわ……よ……」
既に剣を手に持っているアミレスが、オレの姿を見てぎょっとしていた。……どんな表情でも愛らしいな、彼女は。
「どうしたの?! 全身ボロボロじゃない!」
「……あー、その……来る道に馬がいてな」
「馬!? まっ、まさか蹴られたとか……? とと、とりあえず早く手当てしなきゃ!!」
「大した事ではないんだ、見た目程痛みも傷も無いから心配するな」
「心配するなって方が無理あるわよ……?!」
アミレスはそう言いながらハイラさんを呼びに走り出した。その間、オレは師匠と二人きりで取り残される。のそのそと近づいてきた師匠はオレの額目掛けて中指を親指で弾き、中々の打撃を与えてきた。
額を押えながら師匠を見上げると、師匠はじっとこちらを見下ろしていて。
「なんで何もしなかったんだよ」
「……何の事ですか」
「純粋な姫さんならともかく、本気で俺を騙せると思ってんのか」
どうやら師匠には嘘が通用しなかったらしい。……本気で騙せるとも思っていなかったが。
これは仕方のない事なのだと、諦めの面持ちで師匠を見上げて。