だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
 ある日、彼女が人身売買や奴隷取引を行う悪党の拠点に一人(シルフも一応共にいたそうだが)で乗り込んだ末の大立ち回りを、さも武勇伝かのように語る本人から聞いた。
 それには肝を潰された。あまりにも遅すぎる恐怖や心配で喉が詰まってしまい、色々と言いたい事があったのに何も言葉に出来なかった。
 とにかく無事で良かったと、結局それだけしか言えなかった。
 ……ただ。あいつが突然、素性も定かではない謎の少年を連れて来た事が妙に引っかかる。あいつがそれでいいのなら、オレとしてもわざわざ口を挟む事ではないんだろうが。こう……なんだろうな、凄く、引っかかる。
 アミレスがシュヴァルツと仲良さげな姿を見ると……なんだろう、心臓がむかむかする。本当に何なんだこれは、病気か?
 分からない。オレの病気? がなんなのか結局よく分からないんだが、その事象には基本的にアミレスが関わっている。つまりアミレスが原因でオレの心臓はキュッてなったりむかむかしたり早く鼓動するのだろう。
 確かにあいつはよく心配をかけるような真似をするからな、恐れ知らずというかなんというか……。
 とにかく無茶な事だけはしないでくれと。オレは切にそう願った。
 シャンパージュ伯爵家に商談に行った時も、ディオ達の所に向かった時も、シャンパージュ伯爵夫人の治療の時も……無理だけはしないで欲しいと願っていた。

 ──本当に、ずっとそう願っていたんだ。
 無茶なんてして欲しくない。ずっと平和に、安全な所にいて欲しいと。
 まさか彼女の無茶無謀の理由がオレと交わした口約束だなんて、馬鹿なオレは考えもしなかったんだ。
< 451 / 1,368 >

この作品をシェア

pagetop