だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「何だったか、愛し子は儀式を受け神殿都市に来る前から目に余る行動が多かったと報告を受けた気がするんだが」

 ふと愛し子の問題を幾つか思い出してしまった為、再度それを確認すると。
 ジャヌアは少し躊躇う様子を見せつつ口を開いた。

「……その通りでございます。愛し子の住んでいた村にて調査を行った所……愛し子は幼少期より『あんた達はどうせ脇役なのよ、この世界はあたしの為にあるの。邪魔だしどっか行ってくれない?』と近隣に住む少女達を蔑ろにする発言が多かったそうです。更には尊き神々の加護(セフィロス)の名を軽んじ吹聴して回っていたとか」
「どうして儀式を受ける前からその名を知っていたのかはひとまず置いておくとして……例の件は? 大司教何人かが検証したんだろう」

 ジャヌアより神々の愛し子の悪評を改めて聞き頭を抱える。
 そして僕が更なる報告を求めた所、ジャヌアは後ろ手のまま検証結果を報告する。

「は、真実のノムリス卿と無戦のアウグスト卿と不眠のセラムプス卿が愛し子に魔眼を使用した結果──およそ失敗に終わりました。理由は定かではありませんが、アウグスト卿の記憶の魔眼とセラムプス卿の夢見の魔眼が発動しなかった事から、精神干渉系の魔眼のみ効かないものと結論付けました」
「精神干渉系の魔眼だけ、か…………」

 軽く腕を組み、椅子に体を預けて思案する。
 今までに無い事例。これまでも加護属性《ギフト》を持つ者は稀にいた……しかしその者達に魔眼が効かなかったと言う話は未だかつて聞いた事が無い。
 つまり愛し子にそれらの魔眼が効かなかった事には何か別の要因がある。

「ノムリスの真言の魔眼は発動したんだな?」
「はい。何の問題も無く発動し、愛し子が我々に対し虚偽の発言をしていない事だけは分かりました」
「ふむ…………厄介だなぁこれ。貧乏くじを引かされた気分だよ」
「聖人様……」

 お手上げとばかりに肩を落として天を仰いだ僕に、ジャヌアの心配げな声が向けられる。
 ノムリスの真言の魔眼は相手の言葉が嘘か真か分かる魔眼。
 アウグストの記憶の魔眼は相手の記憶を見る事が出来る魔眼。
 セラムプスの夢見の魔眼は相手の夢に介入出来る魔眼。
 この中で精神干渉を主とする魔眼二つだけが失敗に終わった事は確実に偶然では無い。
 稀に魔力に対する抵抗が強過ぎて本人も魔法を扱えない、なんて人が現れる事もあるが……その場合ありとあらゆる魔眼の影響を受けない為、全ての魔眼が発動しない筈だ。
 精神干渉系の魔眼だけが失敗に終わるというこの事態には必ず何らかの理由がある。それを突き止めるのもまた僕達国教会の仕事なのだ。
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