だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜

14.十二歳になりました。2

 マクベスタとの特訓を終え、私は自室に戻り、一度水を浴びてから一休みする。
 先程まで着ていた服はハイラさんがすぐさま洗濯しに行き、私は愛剣の手入れをしていた。この剣は、数年間に及ぶ木剣の素振りや基礎訓練を終えた時にエンヴィーさんが、

『これからは真剣でやってくんで、姫さんにも使えそうな軽いやつ用意しときましたよ』

 と贈ってくれた長剣(ロングソード)で、本当に軽い。なんと片手で振り回せる軽さなのだ。
 一体どういう事なのとエンヴィーさんに尋ねたところ、精霊印の長剣(ロングソード)ですから御安心を〜。とはぐらかされた。
 一応シルフにもこの剣を本当に使って大丈夫かと確認したのだが、シルフからは大丈夫だよ。とだけ返ってきたので、まぁシルフが言うなら大丈夫か……と普通に使っている。
 確かにとても使いやすいからね、この剣。しかも鞘も本体も含めて凄くかっこよくて、ついつい意味も無く佩刀してはしゃいでしまう。
 いつもベッドの横に立てかけて、万が一暗殺者や襲撃者が部屋に押し入ってきた時に備えている。……今のところ、そのような事態には遭遇してないが。
 鼻歌交じりに剣の手入れをしていると、扉がコンコンと叩かれる。どうぞ、と扉に向けて告げると扉がゆっくりと開かれて……。

「し、失礼します……王女殿下に贈り物が届いて……ひぃっ!?」

 見知らぬ侍女が箱を片手に部屋に入って来ては、剣の手入れをする私を見て顔を青くした。

「ぁ、ああ、あのっ、これはここに置いておきます! しっ……失礼しましたっ!」

 乱雑に箱を床に置いて、彼女は震えながら部屋を飛び出した。……見た事の無い侍女だったけれど、野蛮王女に怯えすぎじゃあないかしら。あの様子だとフリードルの所の侍女っぽいなぁ。
 剣先を向けた訳でも無いのに。私はただ剣の手入れをしていただけなのに。てかそもそもフリードルより怖くないでしょ、私は。何をあんなに怯えるのか…………。
 多分、侍女達の前だと何をしても野蛮王女が暴走していると恐れられるのだろう。まったく面倒な話だ。

「……贈り物だって言うなら、こんな風に雑に扱わないで欲しいのだけれど」

 侍女が乱雑に置いていった箱をその場で開き、その中身を見て私はうげぇっ、と汚い声をもらしてしまった。
 箱の中身は、おびただしい量の手紙だった。内容はおおよその想像がつくのだが、とりあえず一番上の手紙を手に取り、それを開く。
< 47 / 1,368 >

この作品をシェア

pagetop