だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「……マクベスタ?」
「っ、す、すまん。まさかプレゼントを貰えるだなんて思ってなかったんだ。それも日付が変わってすぐにとは……」

 どうしたんだろう、と思い声をかけたら、マクベスタはハッとなりながらこちらを見てはにかんだ。

「ごめんなさい、こんな夜分遅くに押しかけて……どうしても一番最初にお祝いしたくて」

 だってマクベスタと仲良くなってから初めての誕生日だから。そう、伝えると。

「そう、か……それは本当に嬉しいな。お前が一番に祝ってくれてオレも嬉しいよ。本当にありがとう、アミレス」

 嬉しさや喜びがひしひしと伝わってくる笑顔を彼は浮かべた。この場にうら若き乙女達がいたならば、確実に落ちたであろうドキドキするような笑顔だ。
 マクベスタってこんな風にも笑うんだなぁ……とつい見蕩れていると、私の肩に乗っていたシルフが突然その肉球を私の目元に押し付けて来て。
 咄嗟に目を閉じたから何も見えない。分かるのはぷにぷにと目元に伝わる肉球の感触だけだ。

「し、シルフ……見えないっ、何も見えないんだけど!?」
「何も見なくていいからねぇ。よし帰るぞエンヴィー、もう撤収だ」
「はいはーい。姫さんは俺が抱えて行くんでシルフさんそのままでお願いしまーす」
「帰るのか。ならば我も帰る」
「え? ちょっ……あの皆さん?! 状況が良く分からな──っひゃあっ?!」
「はーい帰りますよー姫さん」

 何も見えておらず余計に冴える耳で聞き取った会話。それによって知らぬ間に私は部屋に戻る事になった。
 何だかよく分からないまま戻る事になって、とりあえず説明を求めようとした所で、師匠と思しき手によって私は軽々持ち上げられる。
 なんと恐ろしい事に、横抱き……いわゆるお姫様抱っこと思われる持ち方で。
 相変わらずシルフの肉球によって私の目は塞がれたままでどれだけ歩いたのかも分からない。せめて、せめて別れの挨拶ぐらい言わせてよ! と言うか何で急に戻る事になってるの!?

「マクベスタっ! おやすみなさい!!」

 夜中だと言うのに、恥を捨ててとにかく大声で叫んだ。
 すると私の近くから「そんなの言わなくていいよアミィ」とか「姫さんって本当に律儀っすね……」とか精霊さん達の囁きが聞こえてくる。
 しかしそれだけでは無かった。

「──おやすみ、アミレス!」

 遠くの方から微かに聞こえてくるマクベスタの声。それと同時に聞こえてくる誰かの舌打ち。
 今の舌打ちは一体誰が…………と推理パートに入っているうちに部屋に着き、あれよあれよという間に私はシルフによって寝かしつけられてしまったので、結局、推理パートは完結しないままだった……。
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