だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
 今まで一度も人間に加護を与えて来なかった為、ボク自身自分の加護にどんな効果があるか正確には把握していなかったのだ。
 病気になりにくく、そして怪我もしにくくなればいいなと思い六年前にアミィに加護をかけたのだが……まさか毒も呪いも病も効かないとはなぁ。
 アミィの死亡確率が下がったのだから喜ばしい事だ。ただ。
 それらが効かないと分かったアミィは確実に無茶をする。今回だってそうだったのだから。勿論、それは全く喜ばしい事では無い。
 さて、話を戻そうか。とどのつまり、アミィには竜の権能でさえも無効化する程の加護がかけられている。なので、精霊の権能が効果を発揮出来るか定かではない──。それが、ナトラの言いたかった事だろう。
 一応端末(ねこ)越しの話も聞こえるようにしていたからその会話はボクも聞いている。
 二人の会話に耳を傾けつつ、ボクは自室を出てある精霊の元へと向かった。……というか、まぁ、呼べば来るんだけどね。
 ただ呼ぶにしても広い場所でなければならない。片方は何かと派手で大袈裟に振る舞いたがるからな。ぶっちゃけた話、ボクの部屋に呼びたくないだけなんだよね。もう片方は……すぐに来てくれるかどうか分からない。

「命令だ──来い。ルーディ、ロマンスド!」

 大広間のような場所で大きな声で呼び出してみる。ここは屋根が丸く作られているからかよく声が響くのだ。
 ボクは二体の精霊の名を呼んだ。今回試そうとしている二つの権能の持ち主達である。

「──マイ・ロードがお呼びとあらばいつだって馳せ参じようとも! 嗚呼っ、今日も世界一の輝きだマイ・ロード!!」

 うるさ。耳に響く騒音と謎の紙吹雪と共に先に現れたのはルーディだった。揺らめく短めの茶髪に不自然な程真っ黒な瞳の男。元は顔の無い男だったのだが、近頃はいつか人間から奪った顔や瞳を使っているみたいだ。
 その騒々しさに紛れてもう一体の精霊が姿を見せる。

「──ふぁ、わ……っ、ねむ…………」

 ぺたぺたと裸足で床を歩いて彼女は現れた。薄黄色の長髪を寝癖そのままに放置し、瞼を押し上げる事すら億劫そうな表情をしている。
 いつも着ている白の緩いドレスに抱き枕を抱えてやって来たのは、夢の魔力の最上位精霊ロマンスド。眠たいのか凄く目元を擦っている。
 絶対暫く待たされると思ったのに、ロマンスドにしては珍しくすぐに起きてここまでやって来たらしい。
< 472 / 1,399 >

この作品をシェア

pagetop