だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「──お前、今何て言った」

 私なりの考察をしていた所、悪魔が威圧的な声音で問うてくる。そうだった、この悪魔には私の考えてる事が筒抜けなんだった。
 じゃあもう隠しても無駄かと思い、私はもう一度『私が転生者だから』と口を動かす。
 すると、僅かに見える悪魔の口元がうっすらと笑った。前世の事をどう話そうかしらと困っていたその時、悪魔が口を開いた。

「何も聞こえねぇ。お前が自分の正体らしきものを口にした時だけ、お前の言葉も心も何もかもが消えていた。オレサマにも認識出来ないような別次元に飛んだみたいにな。あぁ成程……お前の異常性はその正体に基づくものだったって事か。なぁ、アミレス・ヘル・フォーロイト。お前は何者なんだ───」

 ニヤリと鋭く弧を描いた悪魔の口元。彼のペンでぐちゃぐちゃに塗り潰されたような顔……その隙間から見える紫色の瞳が狂いそうな程に私を見つめている。
 どうやら私の仮説は正しく、私が転生者である事や前世の記憶がこの世界に流出する事は必ず妨害されるようだ。
 別次元に飛ばされる──言い得て妙だ。今の私にとってここは三次元の現実だが、以前の私にとってここは二次元の虚構だったのだから。
 元々別次元にあった為か消された私の言葉が、別次元に飛ばされたと表現されるのは確かにその通りかも……と思ったのである。
 つまり……この世界はイレギュラーたる私によるシナリオの改編は許すものの、この世界に生きる者達にシナリオ等の話をする事は許さないらしい。話すつもりも無かったけれど……益々厄介な事になったなぁ。
 これから起こる色んな事件の時、私はどうやって先回り──言い訳すればいいのだろうか。毎回毎回天啓で誤魔化せるかしら?

 …………そう、暫く考えていると。いつの間にか悪魔は姿を消していて、それに気づいた時には私の意識も覚醒したようだった。
< 477 / 1,380 >

この作品をシェア

pagetop