だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「…………そうと決まれば、もう動かないと」
ボソリと呟いて、僕はその場を離れた。彼女に声はかけなかった……きっとあの少女の事だから、誰にも弱い所を見せたくないと思ったのだ。僕が彼女の弱々しい姿を見たと話せば、きっとそれは彼女を傷つける事になる。
だから何も言わず、何も無かったように僕はその場を立ち去った。
僕に与えられていた部屋に戻り、急いで荷物を纏める。元より荷物は少ない方だからすぐにそれは済んだ。
続いて……彼女への手紙を書いた。内容は簡素に──
『いつかまた必ず会いに行きます。その時はどうか、改めて名乗らせてください』
──たった二行。でもそれは、僕にとってはとても重要な決意。
与えられた全てを受け入れ、与えられた全てを掴み取って初めて叶う事。彼女の前で私が名乗る為に超えなければならない壁や困難はまだまだ山ほどある。
即ち──それら全てを打ち破り、見事君の元に戻って来てみせるという誓い。
この手紙は、一応、そういう意味も兼ねているのだ。……まぁ、心の弱い僕がもう二度と逃げ出せないように逃げ道を無くす……なんて意味もあるけどね。
その手紙を手に、僕はまずシャンパージュ嬢の元に向かった。基本的に操舵室にいると聞いていたのでそこまで迷わずに行き、ここで僕は船を下りると伝えた。
当然だがシャンパージュ嬢は眉を顰め、
「どうやって船を下りるつもりなのでしょうか」
と問うて来た。それに、実は一回限りの移動手段があるんだよね、と答えると。
シャンパージュ嬢は興味無さげに「そうですか」と返して来た。
シャンパージュ嬢に下船する事を伝えられたので、僕は次にシュヴァルツ君を探した。彼はどうやら僕の事情をある程度把握しているようだし、王女殿下に手紙を渡す役目を任せたいと思ったのだ。
……別に手紙を任せるのはシャンパージュ嬢でも良かったかもしれない。しかし、個人的には…事情を把握しているシュヴァルツ君の方が上手く渡してくれるだろうと思ったのだ。
それに、個人的にシュヴァルツ君に言いたい事もあったからね。
「あっ、いたいた。おーいシュヴァルツ君ー」
船の後方の甲板にて、彼はジュース……ジュースかあれ? あの色合いはどう見てもワイン…………まぁいいか。とりあえず、彼は飲み物を片手に黄昏ていた。
真っ白な髪の合間合間から飛び出る部分的な黒髪が何だか角のように見える。
「リードじゃん、どうしたのぉ?」
彼は思い出したように笑顔を作る。僕はシュヴァルツ君に手紙を手渡して、「これを王女殿下に渡して欲しいんだ」と頼む。
シュヴァルツ君は何度か瞬きをして、じっと手紙を見つめていた。そんな彼に向けて、僕は告げる。
ボソリと呟いて、僕はその場を離れた。彼女に声はかけなかった……きっとあの少女の事だから、誰にも弱い所を見せたくないと思ったのだ。僕が彼女の弱々しい姿を見たと話せば、きっとそれは彼女を傷つける事になる。
だから何も言わず、何も無かったように僕はその場を立ち去った。
僕に与えられていた部屋に戻り、急いで荷物を纏める。元より荷物は少ない方だからすぐにそれは済んだ。
続いて……彼女への手紙を書いた。内容は簡素に──
『いつかまた必ず会いに行きます。その時はどうか、改めて名乗らせてください』
──たった二行。でもそれは、僕にとってはとても重要な決意。
与えられた全てを受け入れ、与えられた全てを掴み取って初めて叶う事。彼女の前で私が名乗る為に超えなければならない壁や困難はまだまだ山ほどある。
即ち──それら全てを打ち破り、見事君の元に戻って来てみせるという誓い。
この手紙は、一応、そういう意味も兼ねているのだ。……まぁ、心の弱い僕がもう二度と逃げ出せないように逃げ道を無くす……なんて意味もあるけどね。
その手紙を手に、僕はまずシャンパージュ嬢の元に向かった。基本的に操舵室にいると聞いていたのでそこまで迷わずに行き、ここで僕は船を下りると伝えた。
当然だがシャンパージュ嬢は眉を顰め、
「どうやって船を下りるつもりなのでしょうか」
と問うて来た。それに、実は一回限りの移動手段があるんだよね、と答えると。
シャンパージュ嬢は興味無さげに「そうですか」と返して来た。
シャンパージュ嬢に下船する事を伝えられたので、僕は次にシュヴァルツ君を探した。彼はどうやら僕の事情をある程度把握しているようだし、王女殿下に手紙を渡す役目を任せたいと思ったのだ。
……別に手紙を任せるのはシャンパージュ嬢でも良かったかもしれない。しかし、個人的には…事情を把握しているシュヴァルツ君の方が上手く渡してくれるだろうと思ったのだ。
それに、個人的にシュヴァルツ君に言いたい事もあったからね。
「あっ、いたいた。おーいシュヴァルツ君ー」
船の後方の甲板にて、彼はジュース……ジュースかあれ? あの色合いはどう見てもワイン…………まぁいいか。とりあえず、彼は飲み物を片手に黄昏ていた。
真っ白な髪の合間合間から飛び出る部分的な黒髪が何だか角のように見える。
「リードじゃん、どうしたのぉ?」
彼は思い出したように笑顔を作る。僕はシュヴァルツ君に手紙を手渡して、「これを王女殿下に渡して欲しいんだ」と頼む。
シュヴァルツ君は何度か瞬きをして、じっと手紙を見つめていた。そんな彼に向けて、僕は告げる。