だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
それは王女殿下がお生まれになった日。王女殿下を産んですぐに、皇后陛下は…………。
その報せはすぐさま国中に広まった。王女殿下がお生まれになった事と共に、皇后陛下が天に旅立たれた事が国中に広まり……誰もが戸惑った。国を挙げて祝うべき日になる筈だったのに、国を挙げて嘆くべき日にもなってしまったのだから。
私が最後に皇后陛下にお会い……したのは、皇后陛下の葬式だった。誰もが涙を流し、皇后陛下の死を嘆く。
この世界全てに絶望したような暗く凍える瞳の皇帝陛下が会場に現れると、その場にいた誰もが恐怖のあまり涙も言葉も全てを失った。
皇帝陛下は皇后陛下の眠る棺に皇后陛下の髪によく似た薄紅の花束を入れ、煉獄より這い上がる悪魔のような低い声で私達に告げた。
『疾く失せろ』
たった一言。その喉を締められ息が止まりそうになる一言で、皇后陛下の葬式に参列していた者達は逃げ出すようにその場を後にした。
かく言う私も、人の波に押されて外に出た。父と母ともはぐれてしまったと辺りをキョロキョロ見渡していると、私は面識のある人に声をかけられた。
それはいつもより覇気の無いケイリオル卿だった。彼に『一緒に来てくださいますか』と言われ、事情も分からないまま着いて行った。
すると着いた場所は東宮の辺鄙な場所にある一室。静かに部屋の扉を開けると……そこには一人の侍女と一つのゆりかごがあった。
その侍女には見覚えがあった。皇后陛下の専属侍女をしていた方であり、私もこの一年で何度か世話になった。名をクレアと言う。
ケイリオル卿がクレアと何かを話す。それに彼女がこくりと頷くと、クレアが私の方を見て、
『イリオーデ様、どうか……アミレス様を……お守りください……!!』
たった齢九歳だかの子供相手に、クレアは懇願するように頭を下げた。
その言葉と同時に、私の頭の中では以前皇后陛下に言われた言葉が反芻された。
──守らなければ。王女殿下を、私の生きる意味である御方を!
強く決意した私は、その場で二つ返事をして王女殿下のお傍に控える事となった。毎日帝都の邸から皇宮に通っているのでは駄目だ。
私は父と母を説得し、ランディグランジュである事を最大限生かして、何と皇宮に泊まり込む許可をケイリオル卿から頂いた。
そして、乳母でもあったクレアと王女殿下と共に東宮の外れの狭い一室で、何かから隠れるように日々生活していた。
まだ生後間もない王女殿下が、母の優しさや温もりを知らぬまま生きる事になるなんて……と私は過去を嘆いた。しかしそれは意味の無い事。
とにかく王女殿下のお傍で、王女殿下を危険から守る為に日々を過ごしていた。そうする事およそ一年半。
王女殿下が無事に初のお誕生日をお迎えになられた時には私も涙が止まらなかった。
その日は王女殿下のお誕生日でもあるが、同時に皇后陛下の命日でもあった。常識のある大人なら、皇后陛下のご冥福をお祈りするのだろう。
その報せはすぐさま国中に広まった。王女殿下がお生まれになった事と共に、皇后陛下が天に旅立たれた事が国中に広まり……誰もが戸惑った。国を挙げて祝うべき日になる筈だったのに、国を挙げて嘆くべき日にもなってしまったのだから。
私が最後に皇后陛下にお会い……したのは、皇后陛下の葬式だった。誰もが涙を流し、皇后陛下の死を嘆く。
この世界全てに絶望したような暗く凍える瞳の皇帝陛下が会場に現れると、その場にいた誰もが恐怖のあまり涙も言葉も全てを失った。
皇帝陛下は皇后陛下の眠る棺に皇后陛下の髪によく似た薄紅の花束を入れ、煉獄より這い上がる悪魔のような低い声で私達に告げた。
『疾く失せろ』
たった一言。その喉を締められ息が止まりそうになる一言で、皇后陛下の葬式に参列していた者達は逃げ出すようにその場を後にした。
かく言う私も、人の波に押されて外に出た。父と母ともはぐれてしまったと辺りをキョロキョロ見渡していると、私は面識のある人に声をかけられた。
それはいつもより覇気の無いケイリオル卿だった。彼に『一緒に来てくださいますか』と言われ、事情も分からないまま着いて行った。
すると着いた場所は東宮の辺鄙な場所にある一室。静かに部屋の扉を開けると……そこには一人の侍女と一つのゆりかごがあった。
その侍女には見覚えがあった。皇后陛下の専属侍女をしていた方であり、私もこの一年で何度か世話になった。名をクレアと言う。
ケイリオル卿がクレアと何かを話す。それに彼女がこくりと頷くと、クレアが私の方を見て、
『イリオーデ様、どうか……アミレス様を……お守りください……!!』
たった齢九歳だかの子供相手に、クレアは懇願するように頭を下げた。
その言葉と同時に、私の頭の中では以前皇后陛下に言われた言葉が反芻された。
──守らなければ。王女殿下を、私の生きる意味である御方を!
強く決意した私は、その場で二つ返事をして王女殿下のお傍に控える事となった。毎日帝都の邸から皇宮に通っているのでは駄目だ。
私は父と母を説得し、ランディグランジュである事を最大限生かして、何と皇宮に泊まり込む許可をケイリオル卿から頂いた。
そして、乳母でもあったクレアと王女殿下と共に東宮の外れの狭い一室で、何かから隠れるように日々生活していた。
まだ生後間もない王女殿下が、母の優しさや温もりを知らぬまま生きる事になるなんて……と私は過去を嘆いた。しかしそれは意味の無い事。
とにかく王女殿下のお傍で、王女殿下を危険から守る為に日々を過ごしていた。そうする事およそ一年半。
王女殿下が無事に初のお誕生日をお迎えになられた時には私も涙が止まらなかった。
その日は王女殿下のお誕生日でもあるが、同時に皇后陛下の命日でもあった。常識のある大人なら、皇后陛下のご冥福をお祈りするのだろう。