だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
騎士団に入団した者はまず初めに見習い騎士として訓練や実戦任務に励み、各騎士小隊の隊長の推薦を経て、ようやく正規の騎士となるべく昇進試験を受けられる。
私は髪の色が目立つ上、名前も騎士団にいる者には知られている可能性があった。その為、わざわざ染料を使い髪を黒く染め、名前はシャルルギルから借りた。
念には念をとラークやユーキに言われた結果の、正体がバレない為の対策だった。
幸いにも私は兄と全然似ていない。兄が父に似て、私が母に似たからだ。だから髪の色さえ変えていれば……この顔を見ても私がイリオーデだと周りが気づく事は無かったのだ。
二年間、なんとか見習い騎士として次々に成果を残し、エリニティやディオやシアンの助言に従い、元々私に目をかけてくれていた隊長により気に入られるよう振舞った。
そして。私は入団二年目にして正規の騎士になる快挙を成し遂げた。なんでも、早くても四年はかかるとか言われていたらしい。
だが私としてはこれでも遅いぐらいだった。ここから更に私はもっと上の位まで上り詰め、王女殿下の……王女殿下だけの騎士となる。もっと早く、一秒でも早く。
もう既に違えてしまったあの時の誓いを、今一度やり直す為に。
──ある夏の日の事だった。騎士としての巡回任務中、号外! と声を張り上げて新聞を高く掲げる男達を見た。
何故だか妙な胸騒ぎがして……普段はわざわざ新聞を買ったりしないのに、その号外を私は手にしていた。
そして、その紙面を見て言葉を失った。
【祖国を裏切った大罪人アミレス・ヘル・フォーロイト、ついに断罪! 我等が皇帝陛下自ら首を断つ!!】
心臓が、止まったような気さえした。その言葉を認識した脳が、爆ぜる程に心臓を動かし始める。
周りの音が聞こえなくなる。目が、口が、手が、全身が恐怖のあまり震え出す。
全身から力が抜けてゆく。視界が青く、紫に、そして白くなってゆく。新聞を強く握っている筈なのに、その感覚が無い。自分が今ちゃんと立てているのかすら分からない。
フラフラと、僅かに見える景色の中を感覚も無いまま歩く。そして人のいない路地裏に入り、私は膝から崩れ落ちた。この現実から目を逸らす事を許さないとばかりに、私の視界は徐々に色を取り戻し、それをまた認識させる。
裏切り者? 大罪人? 何故、何故その御名前がそのような言葉と共に並ぶ?
皇帝陛下自ら首を断つだなんて、そんな、そんな……!
『っ、ぅ…………ぁ……なん、で……っ!!』
ポタリポタリと、新聞が水に侵されてゆく。視界が水中にいるかのように揺らぎ、どんどん強く激しくなる嗚咽。
私は髪の色が目立つ上、名前も騎士団にいる者には知られている可能性があった。その為、わざわざ染料を使い髪を黒く染め、名前はシャルルギルから借りた。
念には念をとラークやユーキに言われた結果の、正体がバレない為の対策だった。
幸いにも私は兄と全然似ていない。兄が父に似て、私が母に似たからだ。だから髪の色さえ変えていれば……この顔を見ても私がイリオーデだと周りが気づく事は無かったのだ。
二年間、なんとか見習い騎士として次々に成果を残し、エリニティやディオやシアンの助言に従い、元々私に目をかけてくれていた隊長により気に入られるよう振舞った。
そして。私は入団二年目にして正規の騎士になる快挙を成し遂げた。なんでも、早くても四年はかかるとか言われていたらしい。
だが私としてはこれでも遅いぐらいだった。ここから更に私はもっと上の位まで上り詰め、王女殿下の……王女殿下だけの騎士となる。もっと早く、一秒でも早く。
もう既に違えてしまったあの時の誓いを、今一度やり直す為に。
──ある夏の日の事だった。騎士としての巡回任務中、号外! と声を張り上げて新聞を高く掲げる男達を見た。
何故だか妙な胸騒ぎがして……普段はわざわざ新聞を買ったりしないのに、その号外を私は手にしていた。
そして、その紙面を見て言葉を失った。
【祖国を裏切った大罪人アミレス・ヘル・フォーロイト、ついに断罪! 我等が皇帝陛下自ら首を断つ!!】
心臓が、止まったような気さえした。その言葉を認識した脳が、爆ぜる程に心臓を動かし始める。
周りの音が聞こえなくなる。目が、口が、手が、全身が恐怖のあまり震え出す。
全身から力が抜けてゆく。視界が青く、紫に、そして白くなってゆく。新聞を強く握っている筈なのに、その感覚が無い。自分が今ちゃんと立てているのかすら分からない。
フラフラと、僅かに見える景色の中を感覚も無いまま歩く。そして人のいない路地裏に入り、私は膝から崩れ落ちた。この現実から目を逸らす事を許さないとばかりに、私の視界は徐々に色を取り戻し、それをまた認識させる。
裏切り者? 大罪人? 何故、何故その御名前がそのような言葉と共に並ぶ?
皇帝陛下自ら首を断つだなんて、そんな、そんな……!
『っ、ぅ…………ぁ……なん、で……っ!!』
ポタリポタリと、新聞が水に侵されてゆく。視界が水中にいるかのように揺らぎ、どんどん強く激しくなる嗚咽。