だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
間に合わなかった。私は遅すぎたんだ。絶対に守ると誓ったのに。守り抜くと誓ったのに。私は、私は……ッ!!
ずっと、ずっと私という存在を支えて来た生きる意味が、あの誓いが──最悪の形で永遠に失われた。
この願いは二度と叶わない。叶う事無く失せるのだ。たった一瞬。たった一枚の号外で私の人生全てが否定され、破壊され、無意味となった。
その日、私は無断で騎士団の業務を休んだ。泣き疲れ枯れた喉、酷く陰鬱な顔、力の抜けた体。家にも帰らず、失意の中行くはランディグランジュ侯爵家……帝都にあるその邸。
兄から逃げるように家を飛び出たあの夜に似た夜空の下で、私はその兄に会おうとして家に舞い戻った。十年ぶりに邸に現れた私を、まるで死霊を見たかのような目で見てくる邸の者達。だがそれも仕方の無い事だ。
私は十年も前にこの家を出てから一度も帰って来る事のなかった人間……そして今の私は酷い顔をしている事だろう。それこそ、死霊のように見えても仕方の無いような、そんな顔。
もう、この世界に意味は無くなった。私の生きる意味は無くなり、もう死んでしまおうかと思った。
でも……ただ死ぬ事は出来ない。ランディグランジュの騎士は騎士として死ななければならない。父が非業の死を遂げた以上、せめて私だけでも騎士として死ななければならなかった。
誰かの制止も聞かず、ただ真っ直ぐ、迷う事無く私は兄がいるであろう場所……当主の執務室を目指した。
誇り高き騎士であった父を欺き殺害し、優しくも強かであった母を苦しめ殺害し、いずれ手に入る筈だったその座を欲したあまり己が欲の為に大事件を起こした我が兄。
『なんだ、一体誰……だ…………っ!?』
扉を蹴破ると、そこでは私と同じ青い髪を持つ、父に似た顔立ちの男……我が兄、アランバルト・ドロシー・ランディグランジュが目を丸くして驚愕を露わにしていた。
これはただの腹いせだ。力無く、遅すぎて間に合わなかった私の理不尽で意味不明な八つ当たり。
もしあの時、兄が爵位簒奪など企む事がなければ……私はあれからもずっと王女殿下のお傍にいられたのかもしれない。そもそも何故兄が爵位簒奪など企んだのか……元より時期侯爵の座は兄のものだったのに。
それなのに何故……貴方の所為で私はランディグランジュではなくなった。私は王女殿下のお傍を離れる事となった。
王女殿下のお傍に馳せ参じる事が遅れ間に合わなかった事は私自身の責任なのに…………私はそうやって、兄にその責任を押し付ける形でここに戻って来た。
ずっと、ずっと私という存在を支えて来た生きる意味が、あの誓いが──最悪の形で永遠に失われた。
この願いは二度と叶わない。叶う事無く失せるのだ。たった一瞬。たった一枚の号外で私の人生全てが否定され、破壊され、無意味となった。
その日、私は無断で騎士団の業務を休んだ。泣き疲れ枯れた喉、酷く陰鬱な顔、力の抜けた体。家にも帰らず、失意の中行くはランディグランジュ侯爵家……帝都にあるその邸。
兄から逃げるように家を飛び出たあの夜に似た夜空の下で、私はその兄に会おうとして家に舞い戻った。十年ぶりに邸に現れた私を、まるで死霊を見たかのような目で見てくる邸の者達。だがそれも仕方の無い事だ。
私は十年も前にこの家を出てから一度も帰って来る事のなかった人間……そして今の私は酷い顔をしている事だろう。それこそ、死霊のように見えても仕方の無いような、そんな顔。
もう、この世界に意味は無くなった。私の生きる意味は無くなり、もう死んでしまおうかと思った。
でも……ただ死ぬ事は出来ない。ランディグランジュの騎士は騎士として死ななければならない。父が非業の死を遂げた以上、せめて私だけでも騎士として死ななければならなかった。
誰かの制止も聞かず、ただ真っ直ぐ、迷う事無く私は兄がいるであろう場所……当主の執務室を目指した。
誇り高き騎士であった父を欺き殺害し、優しくも強かであった母を苦しめ殺害し、いずれ手に入る筈だったその座を欲したあまり己が欲の為に大事件を起こした我が兄。
『なんだ、一体誰……だ…………っ!?』
扉を蹴破ると、そこでは私と同じ青い髪を持つ、父に似た顔立ちの男……我が兄、アランバルト・ドロシー・ランディグランジュが目を丸くして驚愕を露わにしていた。
これはただの腹いせだ。力無く、遅すぎて間に合わなかった私の理不尽で意味不明な八つ当たり。
もしあの時、兄が爵位簒奪など企む事がなければ……私はあれからもずっと王女殿下のお傍にいられたのかもしれない。そもそも何故兄が爵位簒奪など企んだのか……元より時期侯爵の座は兄のものだったのに。
それなのに何故……貴方の所為で私はランディグランジュではなくなった。私は王女殿下のお傍を離れる事となった。
王女殿下のお傍に馳せ参じる事が遅れ間に合わなかった事は私自身の責任なのに…………私はそうやって、兄にその責任を押し付ける形でここに戻って来た。