だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
『……貴殿は、本来大剣ではなく長剣《ロングソード》を得物としているのでは? 理由は特に無いのだが、何となくそうだと思ったんだ。だからこそ何故貴殿が大剣を使っていたのか、オレには分からないが……貴殿が本来の得物を使っていたのならば、オレは恐らく勝てなかっただろう』

 ディオの家に戻る道中で、マクベスタ王子が疑問を手に話しかけて来たのだ。
 確かに、彼の言う通り私の本来の得物は長剣《ロングソード》だ。一通りの剣や武器を扱えるように昔躾られたので、一通りの武器を扱えるものの、やはり最も得意とするのは長剣《ロングソード》なのだ。
 ただ、この時私は大剣を使っていた。何故かと言うと。

『……長年使っていた長剣《ロングソード》は、先の冬の薪割りの際に寿命を迎え折れてしまってな。新しく買う金も無かった上、使える大剣があったからこちらを使っていたんだ』
『えっ、薪割り…………?!』

 試行錯誤の末、長剣《ロングソード》で薪割りをするのが最も効率的だったんだ。と話すとマクベスタ王子はぎょっとした顔で『そうなのか……』と呟いた。
 家を出た時から使っていたそれなりにいい剣。金が無いので道具を揃えられず、きちんと手入れをする事が出来なかったからかあっさりと寿命を迎えてしまった。
 分配された謝礼を私も貰ったので、近々長剣《ロングソード》を買いに行こうと思っていた所だった。王女殿下の騎士となるのだから、流石に最も得意とする武器を常に持たずしてどうする。
 明日にでも長剣《ロングソード》を買いに行こう。そう決めて、有言実行……私は翌日には長剣《ロングソード》を買い、それを手に馴染ませるよう延々と素振りをしていた。

 そして王女殿下との再会より数日後の夜。いつも以上に鍛錬に精を出していた私達は着替えていたのだが……ふと、何となくではあるが王女殿下がいらした気がしたのだ。
 これはただの直感。しかし、もしこれが現実であったなら……夜の貧民街に訪れる高貴な御方など、乞食や暴漢の格好の的だ。
 だからもしもの場合に備え、お守りする為にもお迎えに上がらねばと。その一心で過去一の速度で着替えを済まして私は家を飛び出た。

 この時の私は、王女殿下が一人で手練の大人達相手に大立ち回りをしたと言う話を完全に忘れていた。それだけ焦っていたのである。
 すると家の近くに、どこにでもあるような荷馬車が止まっていた。その傍に見えるはこの街に不似合いな御方。今の所危険な目に遭った様子は無いと確認し、安堵した私は当然のように、なんの迷いもなく、その場で跪いた。
 そして王女殿下は私にこう問われた──

『…………そんな所で一体何をしているの? イリオーデ』

 ──何をしているか、という問であり私は『跪いていた』と答える事が正解だったのだろう。だがしかし、私はそれを出来なかった。
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