だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
116.私は王女殿下の為に生きる。
そうやって願い出た同行の末、私はあの悪夢を見た。まるでこうして王女殿下と共にいる事が間違いであるかのように。
──これがお前の辿るべき未来だ。
そう言われているかのように、その悪夢はそれ以来何度も何度も私の夢を侵してくる。その影響か、私はあの事件の際非常に取り乱してしまった。
王女殿下が姿を消し、もしもの事があったとしたら。そしてそれが私の所為かと考えた時、あの悪夢が脳裏によぎった。
また、私はあの御方を守れなかったのか? また、私はあの御方を死なせてしまうのか?
その恐怖と悔恨が私を襲い、あの悪夢から感じた絶望へと引きずり込もうとした。あの時は、シャルのお陰もあり何とか踏みとどまれたが…………王女殿下からの書き置きを見つけられなかった時には、きっと私はあの悪夢のように絶望し、深い悔恨の奈落へと身を投じていただろう。
王女殿下の書き置き──王女殿下のお言葉に従い、私は数日間気が気でない中過ごした。そして王女殿下が伝染病の原因を排し無事凱旋された時、私は自重しようと思っていたにも関わらず己の心情をほとんど吐き出していた。
ただ同時にディオとシャルも捲し立てていた為か、王女殿下は何一つ聞き取れていないご様子であった。……でも、それでもいいんだ。
王女殿下が無事にお戻りになられた事、それが一番なのだから。
私達の言葉など今は届かなくてもいい。王女殿下のお言葉が私達に届くのならば、それで十分だ。
「──ふぅ、一旦休憩にするか」
軽く五百ずつ腕立て腹筋背筋をし、私は剣を振りながら一休みしていた。王女殿下が大変お強い以上、私はもっと強くならなければならない……王女殿下の騎士として恥じない自分になる為に。
休憩がてら素振りをしていると、突然、珍しい人影が現れた。彼女は私を見つけるなり軽く一礼して、
「イリオーデ・ドロシー・ランディグランジュ卿──お時間の方、いただいても宜しいでしょうか」
侍女服とその上に羽織るローブを揺らしてこちらを真っ直ぐ見据えた。彼女はハイラという名前の王女殿下の専属侍女。王女殿下からもかなりの信頼を寄せられている相手のようだ。……そして、恐らくただの侍女では無い。
「その名はもう捨てたものだ。ここにいる私はランディグランジュも関係ない、王女殿下の騎士たるただのイリオーデだ」
ハイラの言葉に訂正を入れると、彼女は「それは失礼を」と軽く謝罪して、
「ではイリオーデ卿、改めてお聞きします。今暇ですか?」
いつかどこかで見た覚えのある栗色の瞳でこちらを見上げて来た。暇かどうかと言われれば、鍛錬で暇ではないのだが……皇宮にて働く彼女がわざわざ一人でこのような場所まで来たという事は、それ相応の理由がある筈だ。
これを聞かねば後悔する、そんな気さえしてしまう程真剣な面持ちのハイラを見て、私は小さく首肯した。
──これがお前の辿るべき未来だ。
そう言われているかのように、その悪夢はそれ以来何度も何度も私の夢を侵してくる。その影響か、私はあの事件の際非常に取り乱してしまった。
王女殿下が姿を消し、もしもの事があったとしたら。そしてそれが私の所為かと考えた時、あの悪夢が脳裏によぎった。
また、私はあの御方を守れなかったのか? また、私はあの御方を死なせてしまうのか?
その恐怖と悔恨が私を襲い、あの悪夢から感じた絶望へと引きずり込もうとした。あの時は、シャルのお陰もあり何とか踏みとどまれたが…………王女殿下からの書き置きを見つけられなかった時には、きっと私はあの悪夢のように絶望し、深い悔恨の奈落へと身を投じていただろう。
王女殿下の書き置き──王女殿下のお言葉に従い、私は数日間気が気でない中過ごした。そして王女殿下が伝染病の原因を排し無事凱旋された時、私は自重しようと思っていたにも関わらず己の心情をほとんど吐き出していた。
ただ同時にディオとシャルも捲し立てていた為か、王女殿下は何一つ聞き取れていないご様子であった。……でも、それでもいいんだ。
王女殿下が無事にお戻りになられた事、それが一番なのだから。
私達の言葉など今は届かなくてもいい。王女殿下のお言葉が私達に届くのならば、それで十分だ。
「──ふぅ、一旦休憩にするか」
軽く五百ずつ腕立て腹筋背筋をし、私は剣を振りながら一休みしていた。王女殿下が大変お強い以上、私はもっと強くならなければならない……王女殿下の騎士として恥じない自分になる為に。
休憩がてら素振りをしていると、突然、珍しい人影が現れた。彼女は私を見つけるなり軽く一礼して、
「イリオーデ・ドロシー・ランディグランジュ卿──お時間の方、いただいても宜しいでしょうか」
侍女服とその上に羽織るローブを揺らしてこちらを真っ直ぐ見据えた。彼女はハイラという名前の王女殿下の専属侍女。王女殿下からもかなりの信頼を寄せられている相手のようだ。……そして、恐らくただの侍女では無い。
「その名はもう捨てたものだ。ここにいる私はランディグランジュも関係ない、王女殿下の騎士たるただのイリオーデだ」
ハイラの言葉に訂正を入れると、彼女は「それは失礼を」と軽く謝罪して、
「ではイリオーデ卿、改めてお聞きします。今暇ですか?」
いつかどこかで見た覚えのある栗色の瞳でこちらを見上げて来た。暇かどうかと言われれば、鍛錬で暇ではないのだが……皇宮にて働く彼女がわざわざ一人でこのような場所まで来たという事は、それ相応の理由がある筈だ。
これを聞かねば後悔する、そんな気さえしてしまう程真剣な面持ちのハイラを見て、私は小さく首肯した。