だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「……私はララルス家が嫌いです。私と母を不幸にしたあの侯爵が憎いです。なので母の死と同時に家を出て、素性を隠し皇宮の侍女となりました。もう二度とあの家に関わるつもりでは無かったのですが……どうしても、権力が必要になったので、あの屑共から何もかも全てを奪ってやる事にしたのです」
私が男である事を後悔している間にも、ハイラ──ララルス嬢はその理由や事情を語っていた。眉を顰め、吐き捨てるように彼女は全てを奪うと豪語した。
爵位簒奪でもって、相手の全てを奪う。それにはどうも……私にも妙な心当たりがあった。
「これでお分かりいただけましたか? 他ならぬ貴方がここに呼ばれた理由は」
「……ああ。理解出来たとも」
兄の爵位簒奪を切っ掛けに全てを奪われた私だからこそ、奪う側の立場に立とうとする彼女に協力を乞われたのだろう。
相変わらず何ともいい性格をしているようだ、ララルス侯爵家の人間は。
「その上で申し上げます。どうか、私の爵位簒奪計画に御協力願えますか……イリオーデ・ドロシー・ランディグランジュ卿」
ララルス嬢はわざとらしく、私の名を全て口にした。もう捨てた名だと言ったにも関わらず、何故あえてこうも本名で呼ぶのか──答えは単純だ。
「ランディグランジュ家をも巻き込むつもりならば…………私も協力しよう。私とて、兄に対しては色々と鬱憤が溜まっているのでな」
何せ兄の所為で私はランディグランジュではなくなったのだから。この恨みも憎悪も全て正当なものと私は主張する。
そのような憎き兄がかつて自分が行ったような爵位簒奪で迷惑を被る姿など、実に滑稽で小気味よいものだろう。だから私は協力する。
地道に復讐をしておかないと、いつかあの悪夢のようにあっさりと殺してしまう気がするからだ。
私の返答を受け取ったララルス嬢はニコリと、意味ありげな笑みを浮かべた。
「それは良かった。ララルス侯爵家もランディグランジュ侯爵家も一族郎党路頭に迷わせるつもりでいたので、そう言っていただけて何よりです」
「……そこまで大規模な簒奪計画なのか?」
「はい。あの屑侯爵に爵位が渡ってから三十四年分全ての財務記録の方を見まして、それはもう笑ってしまうぐらい不正を見つけたのです。それを使ってララルス家の屑共を処分するつもりですわ」
「ふむ……どうやってランディグランジュを巻き込むつもりなのか聞いてもいいか?」
帝国の財政を管理運営するララルス侯爵家ともなると、確かに様々な資料や書類を保管している事だろう。
そのララルス侯爵家の心臓とも言えるものを用いてララルス侯爵家を潰しにかかるとは、なんと末恐ろしい女性なのか。
しかしそれではララルス侯爵家は潰せても、ランディグランジュは巻き込めないのでは? そう私が疑問を口にした所、「それについては私の方から」とシャンパージュ伯爵が口を切った。
私が男である事を後悔している間にも、ハイラ──ララルス嬢はその理由や事情を語っていた。眉を顰め、吐き捨てるように彼女は全てを奪うと豪語した。
爵位簒奪でもって、相手の全てを奪う。それにはどうも……私にも妙な心当たりがあった。
「これでお分かりいただけましたか? 他ならぬ貴方がここに呼ばれた理由は」
「……ああ。理解出来たとも」
兄の爵位簒奪を切っ掛けに全てを奪われた私だからこそ、奪う側の立場に立とうとする彼女に協力を乞われたのだろう。
相変わらず何ともいい性格をしているようだ、ララルス侯爵家の人間は。
「その上で申し上げます。どうか、私の爵位簒奪計画に御協力願えますか……イリオーデ・ドロシー・ランディグランジュ卿」
ララルス嬢はわざとらしく、私の名を全て口にした。もう捨てた名だと言ったにも関わらず、何故あえてこうも本名で呼ぶのか──答えは単純だ。
「ランディグランジュ家をも巻き込むつもりならば…………私も協力しよう。私とて、兄に対しては色々と鬱憤が溜まっているのでな」
何せ兄の所為で私はランディグランジュではなくなったのだから。この恨みも憎悪も全て正当なものと私は主張する。
そのような憎き兄がかつて自分が行ったような爵位簒奪で迷惑を被る姿など、実に滑稽で小気味よいものだろう。だから私は協力する。
地道に復讐をしておかないと、いつかあの悪夢のようにあっさりと殺してしまう気がするからだ。
私の返答を受け取ったララルス嬢はニコリと、意味ありげな笑みを浮かべた。
「それは良かった。ララルス侯爵家もランディグランジュ侯爵家も一族郎党路頭に迷わせるつもりでいたので、そう言っていただけて何よりです」
「……そこまで大規模な簒奪計画なのか?」
「はい。あの屑侯爵に爵位が渡ってから三十四年分全ての財務記録の方を見まして、それはもう笑ってしまうぐらい不正を見つけたのです。それを使ってララルス家の屑共を処分するつもりですわ」
「ふむ……どうやってランディグランジュを巻き込むつもりなのか聞いてもいいか?」
帝国の財政を管理運営するララルス侯爵家ともなると、確かに様々な資料や書類を保管している事だろう。
そのララルス侯爵家の心臓とも言えるものを用いてララルス侯爵家を潰しにかかるとは、なんと末恐ろしい女性なのか。
しかしそれではララルス侯爵家は潰せても、ランディグランジュは巻き込めないのでは? そう私が疑問を口にした所、「それについては私の方から」とシャンパージュ伯爵が口を切った。