だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「実はランディグランジュ侯爵、我が商会──正確には我がシャンパージュ伯爵家に借金をしているんだ。領地の運営が上手くいかないとかで。それに、業務が多すぎて人手が足りないから腕の立つ者を派遣してくれと依頼され、何度かうちの商会の優秀な者を派遣してやった事もある程。歴史あるランディグランジュ侯爵家……その爵位を簒奪してまで手に入れた人間にしては、些か問題のある事だと私は思うのだよ」

 九年前の借金が未だに返済されてない事も信用に関わる重要な問題だと思わないかい? とシャンパージュ伯爵はにこやかに語った。
 鬼才、異端ばかりのシャンパージュ伯爵家……その血筋に生まれ、若くして帝国内外問わず市場拡大を果たした現シャンパージュ伯爵。
 皇帝陛下の次に、絶対に敵に回してはならない存在とまで言われる理由がよく分かった気がする。

 これは本当に、敵に回してはならない存在だ。騎士の直感がそう言っている。シャンパージュ伯爵が家族を溺愛するあまり喧嘩を売ってきた家門を徹底的に潰したとも聞くしな……。
 我が兄ながら本当に愚かなものだ。身の丈に合わない事をしただけに飽き足らず、よりにもよってシャンパージュ伯爵家を敵に回すなど……信じられない。大馬鹿者だ。

「現ララルス侯爵の仕事も……正直に言えばだいぶ粗雑で。全てララルス侯爵の秘書が馬車馬の如く働き何とか補っている形だよ。それが最近はより顕著でね、取引相手としてもかなり腹に据えかねていた所に彼女からの協力要請があったものだから、この際痛い目を見てもらおうかと思ってね」
「因果応報ですね」
「そうだとも。私が回している金を横領するなんて、侯爵も馬鹿な真似をしたものだ。我が一族が最も嫌う事を知らないらしい」
「……横領、着服、過剰労働ですか?」
「その通りだともハイラさん。ララルス侯爵家もランディグランジュ侯爵家も歴史ある家門で無ければとっくに潰していたやもしれない。愛娘が伯爵になった際に邪魔になるだろうしな」

 シャンパージュ伯爵とララルス嬢は紅茶片手に明るく話すが、その内容は聞く人が聞けば肝が冷えるような恐ろしいものであった。
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