だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜

118,5.ある少年少女の活躍

「ふっふっふっ……どうじゃシュヴァルツよ! 我のこの完璧な窓拭き。これではあまりの窓の美しさにアミレスとて目を細めてしまうじゃろうな!」
「ははっ! それならぼくだって負けてないよぅ、見てみろこの埃ひとつ無い彫刻! ぼくの磨きによって更に輝きを増したね!」

 皇宮が東宮の廊下にて、侍女服に身を包んだ少年少女が競い合う形で掃除に励む。
 少年はシュヴァルツ、少女はナトラ。どちらもこの東宮の主たる王女アミレス・ヘル・フォーロイトによってここに連れて来られた子供である。
 そのアミレスが仲のいい精霊達と友人と共に出掛け、二人に侍女業の指南を行っていたハイラもまた、同じように用事があるとつい今しがたどこかに行ったので……今やこの東宮にはほとんど人がいないのだ。

 そこで二人は考えた。アミレスの目につきそうな範囲をハイラのように完璧に掃除して、褒めてもらおうと。
 それ故、他に誰もいない静粛とした廊下で二人は騒ぎながら掃除をしていたのだ。
 体が丈夫で身体能力にも優れたシュヴァルツと、人間に擬態している緑の竜たるナトラ。この二人は持ち前の身体能力で縦横無尽に動き回り、高速に広範囲を掃除する事を可能としていた。

「次はどこを掃除するのじゃ?」
「うーん、おねぇちゃんの部屋の前の廊下をピカピカにする?」

 掃除道具をバケツに適当に突っ込み、そのバケツを持って二人は仲良く並んで歩く。
 暇を持て余した竜と少年は今まで一度もやって来なかった掃除というものにドップリとハマっていた。
 地道で苛立つ事もままある作業ではあるが……いざ上手くこなせた時の達成感、そしてその後に待つアミレスからの褒め言葉がナトラとシュヴァルツを魅了し、中毒性をも生み出したのだ。

「よぅし。ここから先はぼくがやるから、そっち側はナトラがやってね」

 コトンッ……とバケツを床に置いて、腕を左右にぶんぶんと振って境界線を示し、シュヴァルツはナトラに指示を飛ばした。

「うむ、よかろう。こっち側は任されたのじゃ」

 ナトラはそれに頷き、箒を手に取る。
 しかしその時異変が起きた。人がほとんどいない東宮……そこに、突如として大勢の来客が現れたのだ。
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