だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「はっ……まぁ、なんじゃ、その。とにかく侵入者共をこう……ぶん殴るぞ。殴れば人間は死ぬからの!」
「殺しちゃ駄目なんじゃないかなぁ」

 握り拳にグッと力を入れて、ナトラは自信満々な顔でシュヴァルツに見解を伝えた。しかしシュヴァルツは真顔でまず否定から入った。

「何故じゃ、侵入者とは即ち罪人さな。別に殺しても問題無いじゃろ?」

 ナトラは困惑した。人間社会の規律や法律を学びつつあるナトラは『無闇矢鱈と人を殺してはならない』と言う学びを得た。
 だからこそ、今回は侵入者を殺してもいい人間ときちんと判断した上で発言したのだが……それをすぐさま否定されたので納得がいかないようだ。
 そんなナトラに向け、シュヴァルツはにこやかに語る。

「確かにアイツ等は殺しても問題無いゴミだけどぉ……ここで殺しちゃ駄目だよ。だってさ──ゴミ共の汚ぇ血でおねぇちゃんの家が汚れちゃうじゃん」

 だから殺さないようにしないと。そうシュヴァルツは笑顔で付け加える。
 これらの発言にはナトラも頭に電撃が走った思いであった。そこまで考えが至らなかった自分はまだまだと己の未熟さを実感し、そして、

「──お前賢いのぅ! それもそうじゃ、アミレスの家を汚す訳にはいかぬな、何せ我等はアミレスの家を綺麗にしておるのじゃから!」

 シュヴァルツの考えに感銘を受けたようで、バンバンとシュヴァルツの肩を叩きながら「わはははは!」と大きく口を開け上機嫌に笑う。
 シュヴァルツはそれに「ちょ、ほんとに痛いって」と困り顔でこぼす。

 どれだけ衰弱していようとも、少女──いいや、幼女の姿をしていようとも。ナトラが何百何千の時を生きる幻想の王たる竜種である事に変わりは無い。
 故に、上機嫌なナトラの肩パンはめちゃくちゃ痛いのである。普通の人間なら一発で肩の骨を木っ端微塵に砕かれ、その振動だけで全身粉砕骨折ものだ。筋肉とて無事かも分からない。
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