だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
 犯人は姿を完璧に隠している事と言い、雪の降る視界の悪い夜を選んでいる事と言い、たった一突きで確実に心臓を刺している事と言い、相当な手練であると推測される。
 そして恐らく、わざわざ死体にトランプを刺してカウントダウンに似たようなものをしている事から……一連の犯行に何か意味を持たせたいのだろう。
 一体犯人の狙いは何なんだ? 何を思ってこの殺人事件を繰り返す?

「……しかし、被害者に一貫性がないな。こう言った連続殺人ともなると、怨恨の線が多いのだろうが……これまでの六人の被害者は互いに面識など無さそうじゃないか」

 これでは犯人に繋がる手がかりなど見つかりそうもないな、とマクベスタが呟く。
 言われてみれば確かにその通りだ。これ程何もかもを決めて行われているかのような連続殺人……無差別殺人とは思いにくい。
 だがそうでないにしても疑問が残る。犯人は一体どういう基準で被害者を選んでいるんだ? どうして滅多に外に出ない師匠がよりにもよって外出していた日に被害に遭ったんだ?

「死体にトランプが刺さってるのも大分意味不明だよねぇ、その中でも何でハートを選んだのかもわかんないや」
「そりゃァあれなんじゃねーの? 心臓刺すぜって意味でハートにしてんじゃね?」
「そんな単純かなぁ……」

 シュヴァルツが手元の紙にハートのエースのトランプを描く。師匠が心臓の辺りをトントン、と叩くとシュヴァルツは呆れたような視線を向けた。
 ……心臓を刺す意味合いのハート。それで狙われた師匠……。
 何か、何か大事な事を見落としている気がする。もっと大事な何かを。
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