だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
色覚の魔眼より色が喪われる前代未聞の事件。それは魔力暴走とも魔力欠乏ともまた違う、過剰反応《オーバードライヴ》。
彼の一時的な精神崩壊により誘発された、彼の持つ闇の魔力の暴走。それにより彼の中にあった魔力が欠乏寸前まで消費された。
ほんの一瞬の事であったが、彼の持つ全ての力が限界まで酷使された事による反動……それにより起きたものが色覚の喪失という過剰反応《オーバードライヴ》だ。
暴走した彼の闇の魔力は辺りを包み込み、野盗達はそれにより死んだ事だろう。
『……エ、ル…………っ?!』
次にアルベルトが目を覚ました時。アルベルトは見知らぬ大人達に囲まれていた。その大人達は帝国の騎士であり、そこはアルベルトの住んでいた村からもそう遠くはない地方の砦であった。
『目が覚めたかい? 良かった、君に色々と話が聞きたかったんだ』
(──何だ、この目。まるで作り物のような……)
『まず君の名前を聞いていいかな?』
(こんなにもやつれて……それ程に凄惨な事があの村では……)
騎士達は目を覚ましたアルベルトに優しく語りかけた。その胸中には目前で弱々しく息をする幼い少年への同情があった。
しかし、アルベルトは困惑していた。今まで眩い程彩やかだった世界から色が喪われていたから。
『名前……はアル、ベルト……エルはっ、弟は無事ですか?!』
だが色が喪われた事よりもアルベルトにとって重要な事があった。それはあの時自分を庇って怪我を負ったエルハルトの事。
光を失った濁る灰色の瞳で、必死に弟の事を聞いて来たアルベルトに……騎士達は顔を見合わせて眉尻を下げた。
『君の弟……と思しき子供は見つかっていない。そもそも、あの村には君以外の生き残りはいなかったんだ。こんな事を急に言ってはいけないと思うけれど……君以外の全ての大人も子供も死んでいたんだ』
『──そん、な……』
『弟君……ええと、エル君だったかな? 念の為にどんな見た目なのか教えて貰ってもいいかい? あの場にいなかったという事は、どこか別の場所にいる可能性もあるからね』
申し訳なさそうに語る騎士の言葉に、アルベルトは絶望した。その顔からも色が失われ、どんどん青白くなってゆく。
それを見兼ねた騎士の一人が、何とか気を取り直してもらおうとアルベルトにそんな希望を見せた。
アルベルトはその希望に縋ろうと、ポツリポツリと話し始めた。
『……俺と同じ、黒い髪に、灰色の目で……首元に二つ、黒子がある…………九歳の弟。名前は、エル……ハルト』
『エルハルト君というんだね。分かった、おじさん達の方でも探してみるよ』
『っ! お願い、します……っ! エルは、俺を、庇って……!!』
瞳を潤わせて涙ながらに懇願する少年。その姿を見た騎士達は、あの村で何があったのかを聞くに聞けなかった。
彼の一時的な精神崩壊により誘発された、彼の持つ闇の魔力の暴走。それにより彼の中にあった魔力が欠乏寸前まで消費された。
ほんの一瞬の事であったが、彼の持つ全ての力が限界まで酷使された事による反動……それにより起きたものが色覚の喪失という過剰反応《オーバードライヴ》だ。
暴走した彼の闇の魔力は辺りを包み込み、野盗達はそれにより死んだ事だろう。
『……エ、ル…………っ?!』
次にアルベルトが目を覚ました時。アルベルトは見知らぬ大人達に囲まれていた。その大人達は帝国の騎士であり、そこはアルベルトの住んでいた村からもそう遠くはない地方の砦であった。
『目が覚めたかい? 良かった、君に色々と話が聞きたかったんだ』
(──何だ、この目。まるで作り物のような……)
『まず君の名前を聞いていいかな?』
(こんなにもやつれて……それ程に凄惨な事があの村では……)
騎士達は目を覚ましたアルベルトに優しく語りかけた。その胸中には目前で弱々しく息をする幼い少年への同情があった。
しかし、アルベルトは困惑していた。今まで眩い程彩やかだった世界から色が喪われていたから。
『名前……はアル、ベルト……エルはっ、弟は無事ですか?!』
だが色が喪われた事よりもアルベルトにとって重要な事があった。それはあの時自分を庇って怪我を負ったエルハルトの事。
光を失った濁る灰色の瞳で、必死に弟の事を聞いて来たアルベルトに……騎士達は顔を見合わせて眉尻を下げた。
『君の弟……と思しき子供は見つかっていない。そもそも、あの村には君以外の生き残りはいなかったんだ。こんな事を急に言ってはいけないと思うけれど……君以外の全ての大人も子供も死んでいたんだ』
『──そん、な……』
『弟君……ええと、エル君だったかな? 念の為にどんな見た目なのか教えて貰ってもいいかい? あの場にいなかったという事は、どこか別の場所にいる可能性もあるからね』
申し訳なさそうに語る騎士の言葉に、アルベルトは絶望した。その顔からも色が失われ、どんどん青白くなってゆく。
それを見兼ねた騎士の一人が、何とか気を取り直してもらおうとアルベルトにそんな希望を見せた。
アルベルトはその希望に縋ろうと、ポツリポツリと話し始めた。
『……俺と同じ、黒い髪に、灰色の目で……首元に二つ、黒子がある…………九歳の弟。名前は、エル……ハルト』
『エルハルト君というんだね。分かった、おじさん達の方でも探してみるよ』
『っ! お願い、します……っ! エルは、俺を、庇って……!!』
瞳を潤わせて涙ながらに懇願する少年。その姿を見た騎士達は、あの村で何があったのかを聞くに聞けなかった。