だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
 アルベルトにも闇の魔力があると知った騎士達は、身寄りも無く希少な魔力を持つアルベルトを守ろうと、砦に住まわせる事にした。
 相も変わらずエルハルトの行方は知れず、アルベルトは砦で騎士達に様々な事を教わりながらエルハルトが見つかったという報せを待ち続けていた。

 アルベルトが赤以外の色を認識出来ないと分かっても、騎士達は気味悪がったりせず、それ程のショックをあの時……と彼に同情するだけであった。
 ほんの一本の細い線で引っ張られてなんとか立って生きている。周囲の人間にそんな錯覚さえ引き起こさせる程、アルベルトはギリギリの状態で生きていた。ただ弟《エルハルト》と会いたいという一心で。
 そんな彼の為に騎士達は少しでも早く見つけてやりたいと思いつつ、もし見つけたら自分達はエルハルトを捕まえねばならない。という同情と使命とで板挟みとなっていた。

 アルベルトが騎士達の元でただ一つの報せを待ち続ける事およそ八年……ついにその時が来た。
 帝都の実家に帰っていた騎士がたまたま、帝都でアルベルトによく似た男を見たという。ただ、目深にローブを羽織っていて、一瞬しか顔が見られなかったから詳しくは分からないと。
 それを聞いたアルベルトは一目散に帝都に向かった。騎士達の制止も聞かず、馬を走らせ、二ヶ月近くかけて帝都まで行った。
 そして初めてで右も左も分からない帝都で彼は必死にエルハルトを探した。道行く人達にこの顔を知らないかと、不器用にも何度も聞き込んで。

『折角、ようやく手がかりが見つかったと思ったのに……っ、エル……どこにいるんだ……!』

 結果は振るわず、物陰で縮こまって途方に暮れていた時。アルベルトは一人の男に声をかけられた。

『何か困ってるのか?』

 いかにも意地の悪そうな顔をした裕福そうな男が、侮蔑を含んだ視線でアルベルトを見下す。
 実直な騎士達に囲まれて暮らしていたアルベルトは、腹の探り合いというものを知らなかった。その為、馬鹿正直に話してしまった。

『…………弟を、捜してるんです。生き別れた弟が、帝都にいると聞いて……』
『ほぅ、人捜しか。ふむ……どうしてもと言うのならば、我輩が捜してやっても構わんぞ』
『っ?! 本当ですか!? 本当に、本当に弟を捜してくれるのならっ、俺に出来る事は何でもします! だからどうか、弟を……ッ!』
(──何でも? こやつ……まぁまぁ女ウケの良さそうな顔をしておる。これを使って女共を……)

 藁にもすがる思いで見知らぬ男に縋りついたアルベルト。そんなアルベルトの顔を見て良からぬ企みを思いついた男は、気味の悪い三日月を口元に描く。

『貴様の望みを叶えてやるから我輩の望みを叶えよ、良いな?』
『っはい!』
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