だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「それで……どうだイリオーデ。新たな視点からの見解を聞きたい」

 マクベスタが神妙な面持ちでイリオーデに話を振る。
 そこそこの無茶振りではあるが、七回も会議を行って成果が殆ど無い彼等からすれば藁にもすがる思いなのである。

「最初から隠蔽する事を前提とした文書のやり取り、とだけ言えばかなりの大問題だが……その相手というのは誰なのだろうか。私も知る人物か?」

 七回の会議で何とか予想を立てた相手。それを教えてくれとイリオーデが頼むとその場にいた全員が険しい顔つきとなった。
 そして張り詰めるような緊張感が流れる。

(王女殿下はそれ程までに良からぬ輩とやり取りをしているというのか……?!)

 彼等の纏う表情や空気から、事の重大さを改めて理解したイリオーデは固唾を呑んだ。そして、

(……事と次第によっては、王女殿下の忠臣として何としてでも諌めなければなるまい)

 例えそれが主の御意志に背く事であれど、と騎士は決意した。
 そして僅かな沈黙の後。足と腕を組み、天使のような可愛らしい顔を不機嫌さに歪めるシュヴァルツがその予想を口にした。

「──カイル。カイル・ディ・ハミルとかいう野郎が、おねぇちゃんの手紙の相手だよ」

 シュヴァルツが放ったその名を聞いたイリオーデの表情が固まる。それは、イリオーデとて聞いた事のある名であったからだ。

「……ハミルディーヒ王国の第四王子か」
「城に展開された結界を素通りして物体を転移させられる人間なんて、そう何人もいたら困るでしょ?」
「ああ、そうか。ならばやはりあの時の……!」

 その気づきから、イリオーデとマクベスタとシュヴァルツは半年程前の記憶を引き出しより取り出した。
 それはオセロマイト王国の王都ラ・フレーシャが城に滞在していた時、突如天より降り注いだ見知らぬ人間の声。それと同時に転移させられた大量の物資。
 それを成した男の名を、カイル・ディ・ハミルと言う。
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