だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「その様子だと、アミィにそれとなく内容を聞く作戦もあまり期待出来なさそうだね」
「ぜーんぶ空振りだったよぅ、ぼくの方は。ナトラはどうだったの?」
「同じじゃ。何度聞いても『話せるものなら話す』などと訳の分からない答えが返ってくるばかりじゃぞ」

 今度はシルフも混じえ二人と一匹が深くため息を吐く。
 が、しかし。途中でシュヴァルツの表情に気づきが浮かぶ。誰も気づかないような水面下で、シュヴァルツだけがある事に気づいた。

(あぁ、そうか。そういう事なのか……手紙の内容も、カイルとやらとの関係も、全部──……)

 天使のような顔立ちの美少年。その彼の顔に途端に現れるは諦念。

(…………どう足掻いても、ぼく達には理解不能なんだろうなァ。いやぁ本当に──クッソつまんねェな)

 口元を押さえながら地を仰ぐ。その瞳からは生気も光も失われているものの、その口元は何故か弧を描く。
 つまらないと吐き捨てるのにも関わらず、少年はこの状況を楽しんでいた。
 少年が許容しないものはただ一つ、"退屈"のみ。それ以外の全ては少年にとって楽しい愉しい遊戯《ゲーム》なのだ。

「兎にも角にも、アミィから暗号の事や手紙の内容を少しでも聞き出さない事には何も進まない」

 シルフが肉球と肉球をぷにっと合わせて話を進める。
 その声に引かれるようにシュヴァルツはいつもの顔を作り、バッとそれを上げた。

「ナトラ、シュヴァルツは引き続き当たって砕けてくれ」
「意味は無いと思うが……まぁ仕方あるまい。他ならぬアミレスの為じゃしな」
「おっけー、ぼくもやってみるよぉ」
「マクベスタとエンヴィーとイリオーデも同じように頼む」
「分かった。努力しよう」
「了解しましたー」
「……あぁ」
「最後に……無駄骨かもしれないが、ボクとハイラは暗号の解読に挑む。手紙は確保してるね?」
「はい。一通だけではありますが、姫様に気付かれずに拝借しております」

 シルフが指揮を執り各々に役割を与えてゆく。各自が覚悟を帯びた真面目な面持ちとなり、一致団結して彼等は動き出す。

「アミィを悪にしない為にも、ボク達はアミィの秘密を暴く必要がある。例え、それであの子に嫌われるのだとしても」

 作戦会議の参加者達はその言葉に賛同する。

(アミィを守る為ならば、ボクはいくらでも悪になってやる──)

 精霊界で最も美しいと評されるその顔を険しくして、シルフは決意を抱く。
 嫌われるのは凄く辛く、怖いけれど。それでも彼は、最愛の少女の為に自ら悪徳へと堕ちる覚悟を決めた。
 その覚悟が精霊界も魔界も妖精界をも巻き込む結果になると、理解した上で。
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