だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「お前……俺が戻って来るまで一人で大丈夫か?」
「多分大丈夫よ」
「まぁ、犯人に繋がれてる鎖、魔法封じのやつだから今はそいつ無害だし安心しとけ」
「あらそうなの。とにかくそっちも気をつけてねー」
「あいよー」

 手を振りながらカイルの背中を見送る。女の子の道案内の元、無事に彼女の家まで辿り着けるといいけど。
 まぁカイルには方向音痴属性とか無かった筈だし、きっと大丈夫よ、うん。
 そう自分を納得させて私は歩き出す。そう言えば全然皆来ないわね…………もしかして雪や建物の影響で私の出した水鉄砲《ウォーターガン》が見えないのかしら。
 困ったわね、それじゃあいつまで経っても皆は来ないじゃない。

「もっと高く、どこからでも見える場所で……」

 ぶつぶつと呟きながら私は上空目掛けもう一度水鉄砲(ウォーターガン)を放つ。高く高く打ち上げられたそれは、やがて上空で爆発する。今度こそマクベスタかイリオーデか師匠のうち誰か一人でも気づいてくれるといいなぁ。
 そして、カイルの絶対捕縛魔法とやらで拘束され身動きを取れなくなった殺人鬼の傍で膝を折る。

 ローブの上に雪が少しずつ積もってて、それを手で払い、殺人鬼の体を引き摺って近くのベンチまで連れて行く。何とかその体を持ち上げてベンチに座らせた。
 その際にローブのフード部分がズレ落ちる。男は艶やかな黒い髪をしていた。
 とにかく私はこの男の話を聞きたかった。何となくだけど、このままこの男を警備隊に突き出したら駄目な気がするのだ。
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