だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「戻ったぞーアミレス──って何か俺の知らないイケメンがいるぅ?!」
(誰だあの男……王女殿下の御名前を気安く口にしおって……)
「え、しかもマクベスタまで……っ!? 待て待てまてまて、俺まだ推しに会う準備出来てないって、主に心が!」
(……今、オレの名前を言ってなかったか? 知り合いだったか、あの男と……?)

 突然現れた謎の男をじとーっと睨むイリオーデとマクベスタ。
 すると騒ぐカイルにおもむろに近寄り、アミレスが手刀を落とした。

「近所迷惑」
「いだっ……だって仕方ないだろぉ、目の前に推しがいるんだぞ推しが! てかマジであの赤髪のイケメン二人誰?!」

 やけにアミレスと親しげな初めて見る男。だが今は、それよりも驚くべき事があったのだ。

(アミレスが──)
(姫さんが──)
(王女殿下が──)
(((──人の頭を殴っただと?!)))

 特訓や戦闘中であれば一切の躊躇なく相手を攻撃をするアミレスではあるが、その分普段は人一倍誰かを傷つけぬよう無意識に気を使っているのである。
 自分が人を傷つける力を持っていると分かっているからこそ、必要の無い時は人を傷つけぬように下手な反撃や攻撃はしないのだが……今この時、アミレスはカイルの頭目掛けて軽いチョップを落とした。
 それ即ち、アミレスにとってその男が気の置けない仲であるという事。
 彼等三人に叩きつけられたその事実が嫉妬の炎を生み出し、三人の思考を一致させるに至ったのだ。

「赤髪のイケメン二人は私の師匠と私兵よ」
「はー……マジで顔がいいな」
「でっしょ〜〜?」

 チラチラとエンヴィー達を見て楽しげに話すアミレスとカイル。自分達の前ではあまりしない年相応の無邪気な表情を見て、三人は更なる嫉妬に駆られる。

「っ、王女殿下。その不躾な輩は何処の馬の骨ですか……!」

 嫉妬に耐えきれず、拳を震わせながらイリオーデが男の名を聞くと、

「あぁ、そう言えば紹介してなかったわね。こちらお友達のカイル・ディ・ハミルよ」
「どっ……どうもカイル・ディ・ハミルですぅ……」

 アミレスはあっさりと紹介し、カイルがその横でぺこぺこと挨拶した。
 その瞬間、彼等の中にあった嫉妬の炎が嫌悪の炎に飲み込まれた。
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