だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
(何せ、アミレスが言うには俺達の記憶やゲームの知識はこの世界に流出しないようになってるらしいからな。転生者だとか言ってもどうせ通じないし、こうでも言うしかねぇよな)

 アミレスから齎された情報を念頭に置き、カイルは作り話を構成した。

「だからアンタ等が心配するような事は何も無い……と言いたいが、そうも言ってられねぇ身分だからなぁ俺達。ああでも、少なくとも俺達が恋人になったりとかそういう可能性だけは絶っ対に無いからそこは安心してくれよな!」
「そんな心配は最初からしてねェんだよ」
「おねぇちゃんの魅力が分かんないとか生きてる意味無いじゃんお前」
「アミィに手出そうものなら殺す」

 カイルはひゅっと喉笛を鳴らした。恋人になる事だけは無い、と丁寧にサムズアップしてお知らせしたにも関わらず、エンヴィーとシュヴァルツに射殺されそうな程睨まれシルフから禍々しい殺気を向けられたからだ。

(……何コイツ等怖っ! アイツ、マジでやべーのに愛され過ぎだろ……何これ。精霊が二体とただ者じゃない騎士と侍女《メイド》さん、後よく分からん子供が二人に攻略対象のマクベスタ、って…………)

 どんな生き方してたらこんなのに愛され執着されんの? とカイルは呆れ半分恐れ半分にため息をついた。
 なお、この場にいないが……アミレスは魔女と呼ばれる少女と二大宗教の事実上のトップ二人とも仲がいいのである。カイルは知らないが。

「あ。愛されてると言えば……アイツの事大好きなアンタ等に頼みがあんだけど」

 カイルがそう言いながら顔を上げると、誰も彼もが『頼み事? 自分の置かれた状況を理解しろよ』と言いたげに顔を顰める。
 だが。アミレスを大好きな、と言う部分は全く否定しない面々であった。

「アミレスの事をこれから沢山愛してやってくれ。アイツが家族からの愛なんて不要だって心から(・・・)言えるようになるぐらい、アンタ等の愛でアイツの事を満たしてやってくれよ」

 突然、そんな事を言いだしたカイルは優しく微笑んでいた。
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