だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
彼女の結末はとても悲しいものだった。彼女の一生はとても悲しいものだった。
 全てのルートにおいてヒロインを殺す敵キャラであったにも関わらず、凄まじい人気を博した悲しき少女。
 私は、どうやらただの異世界ではなく、乙女ゲームの世界……それも非業の死を遂げる悲運の王女に転生してしまったらしい。

 とりあえず、情報を整理しよう。

 この世界は前世で私がそれはもうやり込んだ乙女ゲーム『UnbalanceDesire(アンバランスディザイア)』通称:アンディザの世界だと確定した。
 舞台は魔法に溢れた陰謀渦巻く大陸。ヒロインはハミルディーヒ王国という国で生まれ育ち、そこで一作目なら五人……二作目なら八人の攻略対象のうちいずれかと恋に落ちるのだ。
 しかしハミルディーヒ王国は、隣国であるフォーロイト帝国と休戦協定を結んだ状態にあった。
 そして、そんな休戦協定を結んでいる中ハミルディーヒ王国に現れたのが、アンディザのヒロイン……ミシェル・ローゼラちゃんだった。

 神々の愛そのものである天の加護属性(ギフト)という強大な力と神々の加護(セフィロス)という加護を天より授けられた事により、戦禍に巻き込まれる事となった少女。
 天属性に限らず、その加護属性(ギフト)と呼ばれるものは人智を超えた力を有する。加護属性(ギフト)を持つミシェルちゃんをハミルディーヒ王国は切り札として重宝し、フォーロイト帝国は彼女を疎ましく思った。
 その為、フォーロイト帝国はアンディザ本編にて、ミシェルちゃんを殺す為にアミレスをハミルディーヒ王国に送り込んだり、加護属性(ギフト)保持者を殺すついでに国を滅ぼすか。と戦争を始めたのだ。
 フォーロイト帝国は、元々ハミルディーヒ王国よりも軍事力に優れていて、そのまま戦争を続けていたならば確実に勝鬨をあげていた事だろう。しかし、フォーロイト帝国は何故か途中で戦争を止めて、休戦協定に応じた……。
 その理由を私は知らない。何故ならゲーム内ではここまでしか語られていなかったからだ。

 しかしその休戦から二十年程が経ち、アンディザの各ルートのシナリオ後編部分にて、ついにその休戦協定が破られる事となる。
 フォーロイト帝国が侵略戦争を始めた事により、ハミルディーヒ王国の切り札としてミシェルちゃんは攻略対象と共に戦場へと向かい、それまでの選択肢や好感度によってはミシェルちゃんや攻略対象が死んだりもする。
 ……ただ、ミシェルちゃんは戦場だけでなくそれ以外にも死ぬパターンがある。それは、アミレスに殺されるパターンか、攻略対象に殺されるパターンだ。
 アンディザで最も哀れなキャラとまで言われるアミレスは、敬愛する父親──皇帝エリドル・ヘル・フォーロイトからの勅命によりハミルディーヒ王国に潜入し、ミシェルちゃんの暗殺を決行する。

 その殺害方法は攻略対象の数よりも多く用意されており、とある時点での一定数の攻略対象からの好感度が低ければ暗殺は成功。
 それも、どの攻略対象の好感度が低いかによって殺害方法は変わり、一定数の攻略対象からの好感度が高ければ暗殺は失敗……と言う風に、コンプリートが非常に難しい仕様になっていたのだ。
 しかも、どうしてかは分からないが全ての暗殺成功シーンに専用CGがついているものだから、オタクとして回収しない訳にもいかず、一度全てのルートを終えてから延々と好感度調整を行ってはアミレスに殺される……なんて作業を繰り返していた。
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