だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
♢♢♢♢
二年前、剣術の特訓にて。
「姫さん、今からはとにかく俺の動きを封じる事だけ考えてください」
「……動きを……ですか?」
特訓の最中にエンヴィーさんが余裕をもって提案してきた。私は何とか一撃を入れようと息も切れ切れに奮闘しているのに……エンヴィーさんは息一つ乱さずそれを片手で軽くいなしてしまうのだ。
そんなエンヴィーさんからの突然の提案に私は立ち止まり、オウム返しのように呟く。
エンヴィーさんもまた構えていた剣を下ろして説明に移った。
「姫さんは女の子なんすから、どれだけ努力しても結局は男に力では勝てないンすよ」
……確かにその通りだけれど、努力が報われないと言われるのは少し心にくるわね。
「だから姫さんには相手の力を受け流す技を覚えて貰いたいんすよ」
「技、ですか」
「そう。弾く、流す、躱す……相手の攻撃をいなす術を身につけていれば、いざという時男相手でもある程度は渡り合える筈ですから」
エンヴィーさんはくるくると剣を器用に動かしながら続ける。
「でもまぁ、一番良いのはそもそも力勝負に持ち込まれないように一撃で相手を落とすか相手の動きを封じる事っすね」
確かに、力勝負で私が勝つ事は不可能だが……力勝負に入るよりも前に敵を倒せばその心配も無くなる。
一撃で相手を落とすか相手の動きを封じる……そうすれば、私にも勝機がある。
「…………つまり、私は戦いにおいては早期決着を狙えばいいんですね?」
「そうッスね。姫さんみたいな魔法も剣も使う人間に長期戦は無理なんで長期戦は絶対に避けてください、長期戦になるぐらいなら逃げるように。そうっすね……長くて十分。それが姫さんが全力で戦える限界だと思っておいてください」
ここ数年間私の特訓を見続けてくれているエンヴィーさんがそう言うんだ、私には恐らく十分以上の戦いは不可能……逆に考えれば十分は戦える。その内に決着をつければいいという訳だ。
「で、話は戻るんすけど……そーゆー訳なんで今から俺の動きを封じる事だけ考えてやって欲しいんすよ。とりあえず魔法は禁止で…………あー、制限時間二十秒で、それ以内に俺を無力化してみてください」
「にじゅっ……!?」
初心者相手に難易度が高すぎじゃあないか!? と私は内心非常に驚愕し呆然としかけたのだが、そうも言ってられないと気合いを入れ直す。
「っ、分かりました!」
額の汗を拭い、私はまた剣を構えてエンヴィーさん目掛けて飛びかかる。
その後……三十分程が経った頃にはもう体力は底をつこうとしていた。休み無しで何度も全力で彼に飛びかかり、毎回呆気なくいなされてきたのだから。
しかしそれでも私は諦めていなかった。ずっと、エンヴィーさんを観察していた。
剣を貰い、本格的な特訓が始まった時にエンヴィーさんに言われたのだ──『相手の技を盗め。実戦以外は相手をよく見て戦え』と。
だから私はずっと見ていた。エンヴィーさんの動きを見てきたのだ。そして、一つだけ癖のようなものを発見した。
エンヴィーさんは剣を大きく振りかぶる直前に少し足先の向きが変わるので、どの方向に剣が振られるか分かる。剣を振る高さはほぼ一定なので上下後ろいずれかに躱せば何とかなる。
この癖を利用しない手はない。そして、私はエンヴィーさんを無力化しなければならないのでその方法を考える。
魔法は使用禁止で、剣だけでどうにか……。
二年前、剣術の特訓にて。
「姫さん、今からはとにかく俺の動きを封じる事だけ考えてください」
「……動きを……ですか?」
特訓の最中にエンヴィーさんが余裕をもって提案してきた。私は何とか一撃を入れようと息も切れ切れに奮闘しているのに……エンヴィーさんは息一つ乱さずそれを片手で軽くいなしてしまうのだ。
そんなエンヴィーさんからの突然の提案に私は立ち止まり、オウム返しのように呟く。
エンヴィーさんもまた構えていた剣を下ろして説明に移った。
「姫さんは女の子なんすから、どれだけ努力しても結局は男に力では勝てないンすよ」
……確かにその通りだけれど、努力が報われないと言われるのは少し心にくるわね。
「だから姫さんには相手の力を受け流す技を覚えて貰いたいんすよ」
「技、ですか」
「そう。弾く、流す、躱す……相手の攻撃をいなす術を身につけていれば、いざという時男相手でもある程度は渡り合える筈ですから」
エンヴィーさんはくるくると剣を器用に動かしながら続ける。
「でもまぁ、一番良いのはそもそも力勝負に持ち込まれないように一撃で相手を落とすか相手の動きを封じる事っすね」
確かに、力勝負で私が勝つ事は不可能だが……力勝負に入るよりも前に敵を倒せばその心配も無くなる。
一撃で相手を落とすか相手の動きを封じる……そうすれば、私にも勝機がある。
「…………つまり、私は戦いにおいては早期決着を狙えばいいんですね?」
「そうッスね。姫さんみたいな魔法も剣も使う人間に長期戦は無理なんで長期戦は絶対に避けてください、長期戦になるぐらいなら逃げるように。そうっすね……長くて十分。それが姫さんが全力で戦える限界だと思っておいてください」
ここ数年間私の特訓を見続けてくれているエンヴィーさんがそう言うんだ、私には恐らく十分以上の戦いは不可能……逆に考えれば十分は戦える。その内に決着をつければいいという訳だ。
「で、話は戻るんすけど……そーゆー訳なんで今から俺の動きを封じる事だけ考えてやって欲しいんすよ。とりあえず魔法は禁止で…………あー、制限時間二十秒で、それ以内に俺を無力化してみてください」
「にじゅっ……!?」
初心者相手に難易度が高すぎじゃあないか!? と私は内心非常に驚愕し呆然としかけたのだが、そうも言ってられないと気合いを入れ直す。
「っ、分かりました!」
額の汗を拭い、私はまた剣を構えてエンヴィーさん目掛けて飛びかかる。
その後……三十分程が経った頃にはもう体力は底をつこうとしていた。休み無しで何度も全力で彼に飛びかかり、毎回呆気なくいなされてきたのだから。
しかしそれでも私は諦めていなかった。ずっと、エンヴィーさんを観察していた。
剣を貰い、本格的な特訓が始まった時にエンヴィーさんに言われたのだ──『相手の技を盗め。実戦以外は相手をよく見て戦え』と。
だから私はずっと見ていた。エンヴィーさんの動きを見てきたのだ。そして、一つだけ癖のようなものを発見した。
エンヴィーさんは剣を大きく振りかぶる直前に少し足先の向きが変わるので、どの方向に剣が振られるか分かる。剣を振る高さはほぼ一定なので上下後ろいずれかに躱せば何とかなる。
この癖を利用しない手はない。そして、私はエンヴィーさんを無力化しなければならないのでその方法を考える。
魔法は使用禁止で、剣だけでどうにか……。