だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「な、何するんすか精霊さん……」
「アミィに告白とか図に乗るなよ人間が。それを助長するお前の発言も気に食わない」
「そーだそーだ! 姫さんは今までもこれからもずっと俺達の姫さんだからな、人間なんかに渡してたまるか」
「さっきから思ってたけどこの精霊達めっちゃ怖……聞いてた話と違うんだがアミレスさん……!」
(──それにしても顔が良いなこの赤い精霊!!)

 精霊達に間合いを詰められ、目と鼻の先にある絶世の美形の気迫に恐怖を覚えるカイル。
 すると、突然シルフとエンヴィーはじっとカイルを見つめ始めた。「な、何……??」と本気で困惑するカイルに、シルフが問う。

「お前、アミィから何か聞いてたのか。ボク達の事」
「え? ま、まぁ…………多分この部屋にいる人の話はある程度……手紙に書いてあったけど……」

カイルがおずおずと返事をすると、

(アミィがボクの事をどう思ってるかを人伝に聞くのは癪だけどあの子は恥ずかしがり屋だからきっと聞いても答えてくれないしこれは仕方の無い事なんだ!)
(姫さんが…………まぁ、それなりに親しく思って貰えてたら御の字かねェ)
(姫様が私共の話を?!)
(王女殿下が……私の、話を……っ!)
(アミレスが他人に何とオレ達の事を紹介したのか、気になるな……)
(へぇ、おねぇちゃんがぼく達の事を……)
(なぬっ! これはアミレスがいかに我を崇めておるかを知れる絶好の機会ではないか!)

 その場にいた者達は三者三様……と見せかけて大体同じような思いを脳裏に浮かべていた。本当に単純な人達である。
 それにしても……何度も友達と繰り返していたにも関わらず、マクベスタは未だにカイルの事を他人と評している。友達の友達は友達じゃないらしい。

「何て?」
「え??」
「何て書いてあったんだ、ボク達の事」

 シルフが心無しかソワソワとしながら尋ねた時には、アミレスが他人に向け自分の事をどう書いたのか気になる者達が全員、カイルの周りに集まっていた。

(あっ……そう言う……)

 興味深そうにジリジリ詰め寄って来る人達を見てふーん……と状況を察したカイルはごほんっ、と咳払いをして、

「……よし、全員分読み上げるからちょっと待ってて」

 サベイランスちゃんを使ってわざわざ過去の手紙を取り出し、そしてそれを読み上げた。
 アミレスにそんな風に思われていたのか、と普段なら絶対聞けない感想を聞けて本人達はご満悦である。
 特にイリオーデとハイラが『強くてかっこいい私だけの騎士』『本当に頼りになるお姉ちゃんみたいな人』と評されていた事を知り、感動のあまり涙したとか。

(これ、本人を前に勝手に読み上げた事聞いたらアイツ絶対怒るよな……ま、是非もねぇよな)

 こうしてカイルは、アミレスの羞恥心を犠牲にシルフ達の中で少しだけ株を上げる事に成功した。
 後日、この事を知ったアミレスが顔を真っ赤にしてカイルに本気で斬りかかったとか……。
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