だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
 そもそもミシェルちゃんとロイが神殿都市に行かなければミカリアとセインカラッドとサラとは出会わない。逆に、ミシェルちゃんとロイが神殿都市に行ってもセインカラッドとサラが神殿都市に行かなければ、ミシェルちゃんとは当然出会わない。

 ミシェルちゃんとロイが神殿都市に行く事になる原因は、魔物の行進(イースター)と呼ばれる不定期に起きる魔物の大量発生イベントで住む村が襲われたからだ。
 そこでミシェルちゃんの天の加護属性《ギフト》が発現し、それが切っ掛けで同時に身寄りが無くなったロイと共に国教会に保護される。そんな経緯で二人は神殿都市に行くのだ。

 つまり、魔物の行進(イースター)でミシェルちゃんの住む村が襲われるのを阻止したら──そもそもミシェルちゃんが天の加護属性《ギフト》を発現する事も、世界の命運を背負わされる事も、神殿都市に行く事も無くなるんじゃあないのか?
 ミシェルちゃんがいなければ厄災を打倒出来ないという不安があるものの、最悪の場合ミカリアを動員すればいい訳だし。ここにいるカイルとかいうチート野郎を全力で酷使すればワンチャンあるかもしれない。

 これをA案としよう。次はB案、セインカラッドとサラが神殿都市に行く理由を無くす方だが…………こっちはかなり難しい。
 何せハーフエルフのセインカラッドは故郷の森が大火災で失われ国教会に保護されて、サラは諜報部としての仕事──皇帝からの勅命で神殿都市に潜入調査をする事になり、神殿都市に行く。
 こちらの理由を無かった事にすると言う事は、自然災害と皇帝の勅命を覆す必要があるのだ。めちゃくちゃ難しい。

 それならば、魔物の行進(イースター)によるミシェルちゃんの村壊滅スタートを阻止する方が簡単だ。ていうか何、ゲーム始まった瞬間に人々の阿鼻叫喚とヒロインの慟哭で始まる乙女ゲームって。改めて考えると凄いわね。
 うーん、やっぱり神殿都市組の出会いそのものを阻止するのは難しそうね…………。

「とりあえず、個人的にはロイかミカリアのルートがいいと思うんだけど」
「俺もそこまでは絞った。で、どっちの方が俺達が安全かと聞かれれば間違いなくミカリアだな。ロイのルートだと戦争も起きるし厄災も出てくるからな」
「ミカリアのルートだと戦争は起きないし厄災もぱぱーっと片付くから私達は安全ね、バットエンドにさえ行かなければ」
「ミカリアのルートでバットエンド行った瞬間に帝国は滅ぶからなァ……」

 ハハハハ、と乾いた笑いを二人であげる。
 じゃあミカリア以外のルートは全力で潰す感じで行こうか、と話を進めた所で「でもさ」とカイルの待ったが入る。
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