だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「ロイの奴、ぶっちゃけ最初から好感度カンストみたいな所あるじゃん。果たしてミカリア以外のルート全潰しで何とかなるのか?」
「まぁそこは……自分のルート以外で毎回虚しくもフラれた不憫系ヤンデレサイコワンちゃんを信じよう。多分ミカリアならロイに噛みつかれても小指で跳ね除けられるわよ」

 乙女ゲームに出てくる幼馴染み攻略対象の宿命、自分のルート以外は毎度フラれる。当然の事だがロイもゲームでその洗礼を受けている。
 ロイの凄い所は、自分以外のルートでは闇堕ちしてミシェルちゃんに選ばれた攻略対象を殺そうとする所だ。前作組のバットエンドの中にはロイが原因のものも幾つかある。
 流石はヤンデレサイコワンちゃん、執念が凄すぎて恐怖でしかない。とアンディザファンをして言わしめた程の男。

「まぁ、それもそうか……じゃあミカリアのルートに無理やり進めさせる感じで行くか」
「ミシェルちゃんがちゃんとミカリアを攻略してくれないと誘拐事件が起きて私達全員報復で死ぬのかぁ……やばいなーこれ」
「もしもの時は俺も動くから、とりあえずはミシェルがミカリアを攻略出来るよう全力でサポートしようぜ、な?」

 だからそう気を落とすなよ。とカイルが眩い笑顔で励ましてくる。
 それに「うん……」と力無く返すと、カイルはわざわざ立ち上がってこっちに来てまでして「元気出せー」と背中をバシバシ叩いて来た。痛いわねこの野郎。
 ガシッとカイルの手を掴み私は食ってかかる。

「私を叩いたな? 今の所まだ父親にも叩かれてないのに!」
「いやだってお前ん家、ネグレクトじゃん……」
「そんな正論をド直球でぶつけてくる……?」

 なんだこいつ、急に梯子外してくるじゃないの。

「まぁ、うちも実質虐待されてたみたいなモンだけどよ……」
「あっ……そうか、お兄さんに……」

 腹違いの兄から度々酷い暴行を加えられていた、というカイルの闇を思い出し、私は思わず彼に同情した。本当に各キャラ家庭環境に問題があるゲームなのだ、アンディザは。

 親または兄弟から虐待を受けるロイとカイル。家族はおろか故郷が大火災や伝染病で滅んだセインカラッドとマクベスタ。自分以外の一族が全員突然死したアンヘル。そもそも親の顔も名前も知らず家族が一人もいないミカリア。片親かつ父親から洗脳に等しい教えを刻まれ続けたフリードル。そもそも家族の記憶が無いサラ。

 攻略対象全員がまともな家庭環境じゃない。てか家族が死にがち。そして家庭環境に問題があるのは攻略対象だけではない。
 生まれてすぐ両親が死んで結果的に捨てられたミシェルちゃん。母親が昏睡状態になる原因となってしまったメイシア。妹が領地の内乱で死んだレオナード。そして皆様ご存知、愛する家族に利用されて死んだアミレス。
 なんだこのゲーム。ひっどいなぁ。
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