だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「もう気にしてないけどな。てかずっと気になってたんだけどさ、お前、もしかしてミシェル推し? なんかミシェルだけちゃん付けじゃん」

 カイルが席に戻って紅茶を一口含み、突然そんな事を聞いて来た。それに対する答えは勿論──

「ええそうよ。私、アンディザだとミシェルちゃん最推しなのよ! だってもう……っ、超可愛いじゃない! 天使、最高の女神!!」

 ──イェス。私はミシェルちゃん最推しだった。誰よりも優しくて笑顔も何もかもが可愛い我等が天使…………少し周りに流されやすい世間知らずな箱入りお嬢様っぽい所もあるけれど、でもこれと決めた事は決して変えない芯の強さもある最高のヒロイン。
 自分の愛する全てを守ろうと巨悪に立ち向かう姿はまさに聖女、いいや聖母のよう──……そんなミシェルちゃんが、私の最推しなのだ。
 これまでは生き残る為に頑張らないとと無我夢中に努力していて、ミシェルちゃんについて語る余裕なんてなかった。だが今は違う……語る余裕が多少はある上に語る相手もいる。
 そりゃあ、私だって元オタクだもの。語るわよ。

「予想以上の熱量が返ってきたぁぁ……でも良かったわ、お前もちゃんとオタクで安心した」

 なんかいつも俺ばっかり語ってた気がするし、とカイルは肩を撫で下ろした。まぁカイルばっかり語ってたのは事実だけどね。
 私にその余裕が無かったのも理由の一つだけど。

「話は戻るんだけどさ」

 これからはオタク語りもしていきたいなぁと考えていた所、カイルがおもむろに口を切った。

「お前、力じゃ男や大人に勝てないって言ったじゃん」
「えぇそうね、勝てないわ。悔しい事に筋肉もつきにくいのよ、この体」
「なるほどなるほど……その件で一つ言いたいんだけどな」
「はい」

 改まった顔でカイルがこちらを見てくる。もしかしてオススメの筋トレとか教えてくれるのかしら? 一体何を言われるのやらと身構えると。
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