だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「なんで当たり前のようにフリードルや皇帝と戦おうとしてんの? 普通に逃げりゃいいじゃん」

 …………た、確かにその通りだーッ! 何であの化け物達と戦うつもり満々でいたんだ私は! 負け戦に挑もうとするなんて私らしくもない!!
 とあまりの大発見に顎が外れる思いの私。

「そんな衝撃受けるような事か? 普通最初に出てくるだろ、逃げの選択肢は」

 開いた口が塞がらない私に向け、カイルが冷静なツッコミを入れてくる。確かにそうだ……普通最初の方に出てくるわよね、逃げって選択肢は。どうして今まで出て来なかったのかしら。

「……なぁアミレスさんよ。まさかとは思うが、お前……ここから逃げられない──とか言うんじゃねぇよな?」

 不安からか額に冷や汗を滲ませ、カイルが薄ら笑いを浮かべる。その言葉を聞き、私は考える。
 ここから……フォーロイト帝国から逃げるって? そんなの、そんなの──……

「……無理だわ。私、帝国から逃げられないみたい」

 絶対に駄目! そう、アミレスが訴えかけてくる。この国から逃げるなんて事、多分この体には出来ないんだ。戦争から逃げ出そうって前に決めた時だって、そういえば帝国から出ようとは全く考えなかったもの。じゃあ本当に、私はフォーロイトから逃げられないの?

「やっぱりかぁぁぁ……最初から逃げの選択肢が出て来ない時点で、そんな気はしてたが……想像以上の頑固っぷりだな、アミレスは」
「なんか、ごめんなさい……まさか逃げる事さえ体に拒否されるとは思ってもみなかったわ」
「いやまぁ仕方ねぇよ、それだけ家族に対する思いが強いんだろ」

 彼の想像を上回るレベルで強く逆らえないアミレスの想いに、カイルは困ったなァ……と頭を抱えていた。

「正直な所、俺的にはもしもの時は国外逃亡させりゃあいいかって思ってたんだよ。そしたらお前は死なないだろ? でもその逃亡って手段が消えちまった以上、お前はいつ爆発するかも分からない爆弾を抱えながら、この箱庭の中でこれから先も生きていかないといけないって訳だ。そんな運ゲーに人生賭けるしかねぇとか最悪だろ……」

 アミレスは恐らく、家族を愛していたが故に逃げるなんて選択肢を知らなかったんだ。何故愛するお父様から逃げる必要があるのか、何故愛する兄様のいないどこかへと逃げなければならないのか……そんな風にアミレスなら考えるであろうと、今の私なら分かる。
 ただ国外に出るだけなら大丈夫なようだけど、きっと『フォーロイト帝国に帰らない』と言う選択肢は私の中には今後一切現れない事だろう。
 絶対、何があろうと──私の帰る家はここなのだから。

「まぁとにかく、逃げなくても死なないで済むよう頑張ろうぜ。俺も協力するし」
「……助かるわ。本当に色々迷惑かけるわね、貴方には」
「いいよ別に。旅は道連れ世は情け、だろ?」

 ニッと笑いながらカイルが手を差し出して来たので、私はそれに応じて彼と握手をする。悪役王女の私が一作目でメインヒーローだった攻略対象とこうやって手を組む事になるなんて、誰が想像出来ただろうか。
 少なくとも半年前の私はそんな事考えもしなかった。だからカイルからの手紙が来て本当に驚いたし、この孤独や葛藤を分かち合える仲間が出来たと喜んだ。

「──目指せ、ハッピーエンド!」
「──えぇ、一緒に頑張りましょう!」

 この日私は……頼れる協力者と共に新たな目標と計画を立てた。
 それはミカリア以外の全ルートを潰し、ミシェルちゃんにミカリアのルートに進んで貰おう大作戦。そして私達は全力でミシェルちゃんがミカリアとくっつくようにサポートする。これよもう!
 多分これが一番世界も我々も安全だもの、絶対成功させてやるわ!!
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