だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「……うーん、そうだなぁ。緊縮のディセイル、君はこの事態をどう捉える?」

 僕は自分の右隣に座る青年に問いかけた。彼は、国教会の教義に反した行いをした大司教、緊縮のジュークラッドがその位を剥奪されたが為に新たに緊縮の名を賜り第十二席に座った大司教。
 ジュークラッドが元第七席であった為、空白になったその席をつめるように第八席以降の大司教達の席次が繰り上がった。故に新たな大司教のディセイルは第十二席なのだ。

 ただ、少し前に風の噂で聞いたのだけど、どうやら大司教達の間ではこの第十二席と言う立場が密かに人気らしく、どうにかして自ら第十二席に降ろう……なんて考える者もいるらしい。
 ジャヌアに本当かい? と前に尋ねた所、『……本当にお恥ずかしい話ですが』と彼は口を切った。第一席はラフィリアから変わる事が無い為、僕の隣に座れるのが後はもう第十二席だけだから。なんて理由らしい。

 これを聞いた時、なんてくだらない事で彼等は争っているのだろう。とついつい心に思ってしまったよ。
 少し話に水を差してしまったね。そんな感じで僕の隣には今ラフィリアとディセイルが座っているのだけど……ディセイルは僕に声をかけられてすぐに、体ごとこちらに向けてハキハキと答えた。

「皆様の暴走、と私は捉えます。まずは正確な診断等を行ってから細かい行動をすべきかと、私は愚考致します」
「つまり彼等の慌てっぷりは君的には宜しくないと?」
「はい。その気持ちも分からなくは無いのですが、皆様、未知のものに対する恐慌から我を失っているようにも窺えます」
「ははは、未知のものかぁ」

 ディセイルは若いのにしっかりした子だなぁ。自分よりもずっと先輩で偉い立場にある大司教達の事と言えども、きちんと……己で定めた基準のもと厳しい評価もしている。
 この円卓に座る者は基本的に皆平等の立場にある、とは言えども……誰だって自分よりも、遥かに長くその座についていた相手には恐縮するものなのに。
 彼はきちんとこの円卓の理念を理解してくれているようだ。これは中々に将来有望な新人が入ったなぁ。揺るぎない芯を持つ彼が、他の大司教達に良い影響を齎すといいのだけど。
 しかし、未知のものか。彼等は僕の事を何だと思っているんだろう。
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