だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「…………よし。フォーロイト帝国とハミルディーヒ王国の警戒に関しては、僕がしよう。君達には……申し訳ないけれど、これからも愛し子の教育を頑張って欲しい。彼女は我等が国教会が導き育むべき存在だからね」
サラリとフォーロイト帝国に関する仕事を担当すると宣言し、僕は大司教達にこれまで通りに頑張るよう伝えた。これを受け、大司教達は一糸乱れぬ動きで胸元に手を当てて、
「はっ! 仰せのままに」
と声を揃えた。彼等は僕からの指令に一切文句を言う事無く従う。ただ、あの愛し子の相手をするのはとても大変だから……色々と許そうかな。
「さしあたって、愛し子には今まで以上に厳しい教育を施そう。君達もこれからは説教や軽い処罰ならしてくれて構わない。あまりにも甘やかしすぎてこのまま高飛車になられても困るからね。彼女には神々の愛し子として相応しい素養を持ってもらわねばならない。そこに彼女の意思など関係ない」
そう。これは僕達の義務であり役目。我等が神々に選ばれし人間を教え導き、やがて神々が望むであろう完璧なる存在へと至らせる助けとなる。それが僕達信徒に神々より与えられた最も重大な使命。
そこに本人の意思などあってないようなもの。今までは年端もいかぬ少女だからと甘やかし、何事も強制せず自主性に任せていたが…………それではならないと。このままでは彼女の中にある天の加護属性《ギフト》と神々の加護を燻らせるだけに終わる。
それは最も許されざる事。故に僕達は心を鬼とする事にした。彼女の自主性に任せていては永遠に神々が望まれるような存在には成りえない……だからこそ、強制する必要がある。
「彼女にほんのひと握りでも他者を思いやる心や自ら努力しようと言う気概があれば、ここまで僕達も心を鬼にする事は無かっただろう。神々より賜りし天上の贈り物を軽んじる事も無ければ、僕達とて彼女を尊重し続けられただろう。だが最早、あの少女に同情の余地など無い」
もしあの少女が人が傷つく事に涙出来る人であれば。人を傷つける事を恐れる心優しき人であれば。世の為人の為にとその力を使える勇敢な人であれば。
きっと、僕も彼等もここまで苦心しなかった事だろう。尊重しなければならない存在に頭を悩ませる事も無かっただろう。
もしもの話をしてももう遅い。彼女はあまりにも無知で愚かで自分勝手だ。神々に選ばれる程の少女だからと、とても清らかで慈悲深き魂を持つ心優しき少女だと思っていた僕達が間違いだったのだ。
「知ってか知らずか……彼女はあまりにも、教義に反してしまった。故に僕達も遠慮する必要は無くなった。これより我々は、教義に則り──……愛し子をどんな手段を用いてでも教育する。これは、神々より我々に下された最大の試練だ」
大司教達の顔つきが変わる。強い決意を帯びた瞳で、彼等は深く頷いた。たった十一人の選りすぐりの大司教達……そんな彼等が本気で教育するとなれば、愛し子とて多少なりとも変わる事だろう。
どうか少しでも愛し子が変わりますように。姫君程優れた人になれるとは僕も思っていないし期待していない。だからせめて、姫君の一割程度でも……愛し子の考えや姿勢が良くなり近づく事を祈るしかない。
あぁ、我等が神よ…………何故彼女なのですか。何故、あのような少女を愛したのですか────。
♢♢
ガシャンッ、パリンッ! と食器の割れる音がする。割れた食器の欠片を慌てて拾い集める若き司祭の女性の傍には、美しい金色の髪に鮮やかな水色の瞳を持つ絶世の美少女が、顔を真っ赤にして立っていた。
サラリとフォーロイト帝国に関する仕事を担当すると宣言し、僕は大司教達にこれまで通りに頑張るよう伝えた。これを受け、大司教達は一糸乱れぬ動きで胸元に手を当てて、
「はっ! 仰せのままに」
と声を揃えた。彼等は僕からの指令に一切文句を言う事無く従う。ただ、あの愛し子の相手をするのはとても大変だから……色々と許そうかな。
「さしあたって、愛し子には今まで以上に厳しい教育を施そう。君達もこれからは説教や軽い処罰ならしてくれて構わない。あまりにも甘やかしすぎてこのまま高飛車になられても困るからね。彼女には神々の愛し子として相応しい素養を持ってもらわねばならない。そこに彼女の意思など関係ない」
そう。これは僕達の義務であり役目。我等が神々に選ばれし人間を教え導き、やがて神々が望むであろう完璧なる存在へと至らせる助けとなる。それが僕達信徒に神々より与えられた最も重大な使命。
そこに本人の意思などあってないようなもの。今までは年端もいかぬ少女だからと甘やかし、何事も強制せず自主性に任せていたが…………それではならないと。このままでは彼女の中にある天の加護属性《ギフト》と神々の加護を燻らせるだけに終わる。
それは最も許されざる事。故に僕達は心を鬼とする事にした。彼女の自主性に任せていては永遠に神々が望まれるような存在には成りえない……だからこそ、強制する必要がある。
「彼女にほんのひと握りでも他者を思いやる心や自ら努力しようと言う気概があれば、ここまで僕達も心を鬼にする事は無かっただろう。神々より賜りし天上の贈り物を軽んじる事も無ければ、僕達とて彼女を尊重し続けられただろう。だが最早、あの少女に同情の余地など無い」
もしあの少女が人が傷つく事に涙出来る人であれば。人を傷つける事を恐れる心優しき人であれば。世の為人の為にとその力を使える勇敢な人であれば。
きっと、僕も彼等もここまで苦心しなかった事だろう。尊重しなければならない存在に頭を悩ませる事も無かっただろう。
もしもの話をしてももう遅い。彼女はあまりにも無知で愚かで自分勝手だ。神々に選ばれる程の少女だからと、とても清らかで慈悲深き魂を持つ心優しき少女だと思っていた僕達が間違いだったのだ。
「知ってか知らずか……彼女はあまりにも、教義に反してしまった。故に僕達も遠慮する必要は無くなった。これより我々は、教義に則り──……愛し子をどんな手段を用いてでも教育する。これは、神々より我々に下された最大の試練だ」
大司教達の顔つきが変わる。強い決意を帯びた瞳で、彼等は深く頷いた。たった十一人の選りすぐりの大司教達……そんな彼等が本気で教育するとなれば、愛し子とて多少なりとも変わる事だろう。
どうか少しでも愛し子が変わりますように。姫君程優れた人になれるとは僕も思っていないし期待していない。だからせめて、姫君の一割程度でも……愛し子の考えや姿勢が良くなり近づく事を祈るしかない。
あぁ、我等が神よ…………何故彼女なのですか。何故、あのような少女を愛したのですか────。
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ガシャンッ、パリンッ! と食器の割れる音がする。割れた食器の欠片を慌てて拾い集める若き司祭の女性の傍には、美しい金色の髪に鮮やかな水色の瞳を持つ絶世の美少女が、顔を真っ赤にして立っていた。