だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜

18.ある精霊の不安

 あの方の頼みで人間の女の子に剣術を教えるようになってからはや六年……俺は、漠然とした不安に襲われていた。
 ある日姫さんがもう一人の弟子のマクベスタと二人で模擬試合をしている間に、姫さんの事についてその不安をお…………じゃなかった、あー、シルフさんに相談しようとした。
 ……あぁ、あの子を姫さんって呼んでる理由はシルフさんのお気に入りで人間の国の王女だからってだけだ。深い意味はねぇよ、これぐらい緩い方がやりやすいんだ俺ァ。
 つぅか本当に言いずれぇな……シルフさん、って。焦るというか混乱するというか。

「……シルフさん、ちょっといいっすか」

 遠くから木剣を使った二人の模擬試合を眺めているシルフさんに声をかける。……しっかし、何で猫なんだァ? そりゃ制約の関係でアンタがこっち来られないってのは分かるけどよ、普通に人型の分身にすりゃあ良かっただろうに。
 シルフさんも意外と抜けてるとこあるんだよな……。
 猫の姿をしたシルフさんはいつも姫さんに向けているような瞳とは正反対の、冷たい眼差しをちらりと向けて来た。

「何の用だ、エンヴィー」

 声もまた淡々としていて姫さんと一緒にいる時とは大違い……というか、姫さんと接する時が異常なんだよ。俺達の知ってるシルフさんは寧ろこっちで、あんなデレデレしてふにゃふにゃしたシルフさんは今まで見た事が無い。
 機嫌がいい時に稀に優しくなったり軽快になったりするヒトではあったが、あんな様子は割と本気で見た事が無い。ぶっちゃけ気味悪い。
 こんな事口が裂けても言えねぇけどな……本人に言った日には殺される……。

「姫さんの事で色々と話があるんすけど」
「…………聞いてあげるよ」

 とにかく気を取り直して、俺は相談がある事を伝える。もしここが精霊界で話題が別であったなら、確実に門前払いだっただろう。
 ……本当に、どんだけ姫さんの事気に入ってんだよこのヒトは。確かにめちゃくちゃ面白くて将来が楽しみではあるが。

「分かってた……んすよね、シルフさんは……その……」

 途中で言葉を詰まらせてしまった。しかし、シルフさんは俺が話そうとしている事を理解したようで。

「アミィの才能の事か」

 と欠伸をしながら言った。俺はそれに頷き、続ける。
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