だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「……そう言えば私《わたくし》の笑った顔は人々に不評なのだと忘れておりましたわ。不快な気分にさせてしまったわね」

 ギギギ、とぎこちない動きで顔を逸らして私はボソボソと謝罪した。
 どこでやっても相手に恐怖を与える我が一族の笑顔。御先祖様達はどうして全く笑って来なかったのかな〜! 何でそんなに表情筋が死滅してたのかな〜!!

「いえっ、決してそのような事は! その、俺も先輩も王女殿下の聖母のような笑顔に見蕩れ──いだっ!!」
「だーかーらーっ、お前は何でそう余計な事ばかり言うんだッ! 王女殿下相手に無礼だろ?!」
「だって事実じゃないですかぁ!」

 ピクリと私の耳が反応する。何やら思わぬ方向に話が転がっている。どうやら、彼等は私の笑顔に見蕩れていたのだと。まぁアミレスの顔だからそれも仕方ないか。
 それにしても、ずっとケイリオルさんは私の方を見たまま固まってるし……ハイラも同じようにずっと無表情で騎士達を見下ろしている。
 これ、この状況を何とか出来るのは私だけなのでは? そうと気づいてしまった以上何とか収拾をつけなければならない。果たしてそれが本当に可能かどうか分からないが、やるだけやってみよう。

「皆さんお気になさらず……褒められて喜ばぬ人などいませんから。ありがとう、その褒め言葉はしっかりと聞き届けましたわ」

 さぁとくと受けるがいい、我が渾身の笑顔を。どうやら彼等は私の笑顔に怯えた訳ではないようだったので、ここは一つアミレスの容姿を全力で活かす事にした。
 どうだ可愛いだろう、何せアミレスは美少女だからな。アミレスのような美少女に微笑まれて大人しくならない男などいないだろう、知らんけど。

「女神だ…………」
「先輩……分かりますその気持ち……」

 あれ? 何か変な事口走り始めたぞこの人達?

「ふ、今更ですか。私の姫様は最初から女神のように美しく可愛らしい尊き存在なのですよ」

 ハイラ??

「……はっ、王女殿下の神々しい微笑みに見蕩れて言葉を失っておりました」

 貴方まで乗っかるんですかケイリオルさん?!
 おかしい、状況が悪化した気がする。どうして騎士達もハイラもそんなキラキラした目で見つめてくるの。やめて、そんな目で私を見るなっ!
 滅多に笑わないフォーロイトが笑うとこうなってしまうのね、成程参考になったわ。これからはあんまり笑わないようにしないと。
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