だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「なんだぁ、この空間は……」

 救いよ現れた!! 何ていいタイミングで現れたの、ダルステンさん!
 初めて会った時とは違い、裁判直後と言う事でかなりきっちりした格好をしたダルステンさんがこちらを訝しみながら歩いて来た。
 私は彼を救世主と認識し、意気揚々と声をかける。

「司法部部署長ダルステン! 良くぞ来てくれましたね!」
「え、ええ……? どうしたんですか王女殿下……」

 瞳を輝かせてダルステンさんに近寄ってみると、勘がいいのか何なのか、彼に警戒されてしまった。

「実は私《わたくし》、これからアルベルトと少しだけ話がしたいのです。なので少しだけ彼の時間をいただきますわ、ではこの場はお任せします」
「は、え、ちょ……っ?!」
「積もる話もありますから暫く彼と二人きりにしてくださいまし、それでは皆様ごきげんよう!」
「いや少しだけってさっき自分で──!」

 鮮やかにこの場の収拾をダルステンさんに押し付け、じゃあの! と私は目にも止まらぬ速さで扉を開けて入室。流れるように内側から鍵をかけてふぅ、と一息つく。
 くるりと振り向くとそこでは、ギョッとした顔で何度も瞬きをしているアルベルトが長椅子《ソファ》に座ってこちらを見ていた。

「姫様?! ご無事なのですか姫様!」
「ま、まぁハイラさん……最悪私が扉を蹴破って入りますのでひとまずは落ち着いて下さ……」
「誰が落ち着いてなどいられますか! 姫様が何処の馬の骨とも知れぬ男と密室で二人きりなのですよ!?」
「とにかく落ち着いて下さい、この部屋はかなり扉も薄いので我々の会話も中から聞こえているでしょう。実質、密室ではないようなものです」

 確かに、扉の向こうからハイラとケイリオルさんの会話が聞こえてくる。まぁ別に聞かれて困る話をする訳でも無いしいいのだけど。
 気を取り直して、私はアルベルトの隣に座った。その事に戸惑いキョロキョロと視線を泳がせるアルベルトを私は至近距離で眺めていた。その首からはもう隷従の首輪が外されていて、彼の色白な首元がよく見える。

「アルベルト」
「はっ、はい」

 彼の濁った灰色の瞳を見ながら名を呼ぶと、彼はビクッと肩を跳ねさせてこちらを見た。

「ごめんなさい。私がもっと早くこの事件に関心を抱いていれば、貴方は無駄な殺しをしなくて済んだのに。色々と……遅れてしまって本当にごめんなさい」

 目が飛び出てしまいそうな程に見開かれるアルベルトの瞳。それを見つめながら、私は更に続けた。
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