だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
 その後、役人に連れられて俺は諜報部と言う場所に向かった。どうやら俺の終身奉仕の場所はその諜報部なる部署らしい。

 …………しかし、部署というと何か凄い難しい試験を受けなければ所属出来ない場所、と前にどこかで聞いたような。罪人が下働きをする分には問題無いのだろうか。
 隠し通路を通り、着いた場所はごくごく普通の通路。そこでは只者ではない老人が待っていた。

「儂はヌル、諜報部の部署長をしておる者だ。これからは少年の上司となる。ああ、だが顔と名前は覚えなくて良い。この顔もいつまで使うか分からんのでな」

 顎に蓄えられた髭を撫でつつ、老人は軽快に自己紹介をした。想像よりも気さくに話しかけてくる相手に困惑しつつ、返事をする。そして、ようやく諜報部と言う部屋に足を踏み入れた。そこもやはりごく普通の部屋。ただ、不自然と人のいない空間だった。
 何でも、諜報部に所属している人達は今そのほとんどが任務で出払っているとか。その為、これから俺も世話になる人達については顔を合わせ次第紹介して貰えるらしい。

「だが誰も先輩を知らないというのは些かどうかと思ってな。少年と同じように闇の魔力を持つ者がうちにも丁度いたので、それを少年の教育係とする事にしたのだ。おい、出番だぞ」
「──はい」

 老人……ヌルさんが奥の扉に向けて声を投げかけると、そこから若い男の声が聞こえて来た。俺以外の闇の魔力所持者……凄いな。そんな偶然、が──……。
 あるなんて、と思った時。俺の眼は見開かれた。心臓が高鳴るのが分かる。言葉が出るよりも早く、俺の足は動いていた。
 そんな、そんな! 嘘だ、まさかこんな所で! その髪も、瞳も、顔も、何もかもがずっと捜し求めていたたった一人の弟のものだ。ああ、そんな──……ずっと、ずっと会いたかったんだ。
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