だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜

144.帝都に混乱を2


(……──何が起きたんだ。何故あいつは泣きながら、自ら意識を断った? そもそもどうして急に泣き出したんだ?)

 明らかな異変を見せて今は意識を失っているアミレスを呆然と見下ろし、フリードルは困惑していた。そんなフリードルを置いて、侍女服を翻してシュヴァルツとナトラがアミレスに駆け寄る。

「おねぇちゃん、おねぇちゃん!」
「お、おいアミレス……どうしたのじゃ、目を覚まさんか。アミレス!!」
「くっそ……っ、何でこんな事になったんだよ……!!」
「シュヴァルツ、我は……我はどうすればよいのだ?!」
「とにかくハイラを呼んで看病を! それよりも先に暖かい所に連れて行かないと、どんどんおねぇちゃんの体温が下がっていってる!!」
「分かった、我がアミレスを運ぶ!」

 意識を失い倒れ込んだアミレスを抱き上げ、ナトラは地面を強く蹴り、瞬間移動に等しい高速移動を行った。行先は勿論東宮。そしてその場にはシュヴァルツとフリードルだけが取り残された。
 おもむろにシュヴァルツは立ち上がり、悪意に満ちた目でフリードルを睨んだ。

「何が何だか分からない、って顔してんなァ……お前。自覚ねぇの? それとも心がねぇの? ハンッ、どっちにしろとんだ不良品だな」

 普段の明るい声でもなく、気の抜けた口調でもなく。少年は普段とは全く違う声と口調でフリードルに接近する。まるで二重人格なのかと疑うぐらい、その表情も放つ禍々しい威圧感も普段のシュヴァルツからはかけ離れたものだった。
 少年によるあまりの不敬に、フリードルは僅かに不快さを表に出した。しかしそれも構わず少年は続けた。

「なあ、それ楽しいか? 血の繋がった妹をあそこまで追い詰めて、目の前で自殺未遂までさせて。何でお前等みたいな屑は決まって自分には非が無いって考えてんだろォな。自分の思考や言動が絶対的に正しいって信じてやまないんだろォな。ぼくには分からねぇよ、お前等みたいな人間のそーゆー独善的な所が」

 その少年はフリードルの目と鼻の先まで近づき、その足元にあるフリードルの影を踏んだ。そして、全身の毛が逆立つような高圧的な声で少年は口ずさむ。

「頭が高ェんだよ、跪け」
「──ッ?!」

 その瞬間、フリードルの足から力が抜け、彼は地に跪く事となる。
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