だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
(な──、何が起きて……っ?! この子供は、一体何者なんだ……!!)

 突然の事に目を見開き、冷や汗を滲ませる。フリードルは必死に頭を働かせた。
 目の前の侍女服を着た子供が何者であるか、この力が何であるか。しかしその答えに辿り着ける筈がなかった。

(精霊の、さっさと制約を破棄してくれないかなァ……)

 ギョロ、と鋭く見開かれた金色の瞳孔。天使と見紛う愛らしい顔で、少年はフリードルを冷たく見下していた。
 その胸中ではどこぞの精霊がさっさと制約を破棄する事を望む。

「ハァ……ここでお前の事殺せたら、後顧の憂いもなく万々歳、最高だったんだけどなァ。ぼくは誰も殺せないしぃ、お前の事殺したら彼女が泣くからなァ、あームカつく。お前ホンットに恵まれてるよ。当然のようにそれを享受して疑わないのもすげームカつく」

 少年はフリードルを見下し謗る。虚ろとなっている少年の瞳。ふわふわな白い髪が彼の顔に濃い影を落としていた。

「……僕が死んであいつが泣くだと? あんなにも憎悪に満ちた目で僕を睨む、あの女が?」
(──この子供が何者で、あいつとどのような関係なのかは知らないが……知ったように自分を語られる事がこうも腹立たしい事とは)

 フリードルは密かに奥歯を噛み締めていた。突然見ず知らずの少年によって跪かされ、抵抗すら出来ないこの状況が気に食わないのである。それと同時に、フリードルにとって理解不能な事を語る少年に苛立ちを覚えていたのだ。
 フリードルの反応に少年は眉を顰める。

「は? さっきの見てなかったのかよ、お前。つーか、そもそも何で彼女が泣いてたのか教えろ。お前は彼女に何をした、何を言ったんだ」
「……僕が何故あいつを愛してやる必要があるのか、と言った。この言葉に何の意味がある」
「──っ!」

 何が原因でアミレスが泣き出したのか……それに何故か気づかないフリードルは少年を見上げて疑問符を浮かべた。フリードルにとってアミレスとは道具。役に立つかどうかも分からない使い捨ての道具にすぎない。
 ただ、ここ暫くでフリードルにとっても厄介な障害となりつつあったが…………何にせよ、フリードルがアミレスを妹だの家族だのと思った事はただの一度もなかった。
 ずっと、物心ついた時より父であるエリドルから洗脳に等しく言い聞かせられていた為か、フリードルは『アミレスはいつでも捨てられる道具である』と信じて疑わない。それ以外の認識が、彼の中にはそもそも無いのだ。
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