だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
 それはいつの日かアミィが言っていた言葉、『メンタルゴリラ』というやつなのではと。人の嫌がる事をするのが好きな変態であり、周りにどんな反応されようと全く気にしないあの男にはメンタルゴリラと言う言葉が相応しかろう。
 そうだよな、ハノルメ? と目線で語りかけてみる。するとどうだろう、ハノルメはニコリと適当な笑みをこちらにむけた。多分、『なんかよう分からんけどとりあえず笑っとこ』とか考えてるんだろうな。

 さて、そんなハノルメは無視していきたい所なのだが、流石にハノルメと言えどもなんの用も無くボクの部屋まで来る訳が無い。十中八九何かあったのだろう。精霊界一の地獄耳……情報通なハノルメの事だ、また何か厄介事を抱えて来たか何かの報告だろうな。
 とりあえず、「何の用でここに来たんだハノルメ」と話を振ってみる。するとエンヴィーに絡むのをやめたハノルメがボクの前に水晶玉を一つ、コトンと置いて。

「これルチアロから預かっとるやつやねんけどな、ちょっと見て欲しいねん」
「何処だここ、そして誰だこの子供」

 水晶玉にはどこかの街並みが映し出されており、その中心には金髪の子供がいた。エンヴィーもこちらが気になったのか、背伸びして上から覗き込むように水晶玉を見ている。その水晶玉に映し出された景色を見て、エンヴィーが「あ」と言葉を漏らした。

「神殿都市じゃん、そこ。俺前に行ったから分かるわ」

 ああ……ボクに無断でアミィに精霊召喚させたり人間界で暴れた日の事かな。ボクもかなり説教したからよく覚えているとも。と、考えつつちらりとエンヴィーを一瞥してみる。
 するとエンヴィーはビクッと肩を跳ねさせて目を逸らした。

「光の魔力を持つ人間がぎょーさんおるとこやね。んで、その女の子はその中でも一等特別で面倒な子ってルチアロが言うてたよ」

 ハノルメの説明を聞いて、成程ねとボクは納得した。ルチアロは光の最上位精霊……それも精霊達の中でも一二を争う博愛主義にして人間大好き精霊。常日頃から光の魔力を持つ人間が多くいる街を観察していてもなんらおかしくない、それが彼女だ。
 何を隠そうボクも人間界の観察自体はアミィに会う前から頻繁に行っていたからね。アミィに会ってからは、魔力で分身体を作ってそれを人間界に送り込んでる訳だけど。
 それにしても、一等特別で面倒か。何だかとても嫌な予感がするぞう。

「その女の子が例の神々の愛し子なんやってさ、ほら、前に神々がクッソ腹立つ顔で自慢して来よった神々の加護(セフィロス)と天の加護属性《ギフト》持っとるっていう」

 やっぱりかぁああああ! 知ってるよ、なんか神々のお気に入りがどうのって話は少し前にその神々から聞かされてたからね! でもまさかそれがこのタイミングで……これ以上厄介事を増やさないで欲しい。こっちはただでさえ忙しいんだから!!
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