だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「神々のお気に入りが何だって言うんだ。どうでもいい、そもそも興味無い」
「まあまあそう言わずに。ルチアロ曰くな、この神々の愛し子がルチアロお気に入りの子供達に迷惑かけまくっとるらしくて、『ちょっとあの子供の所にカチコミをかけてもいいかしら、いいわよね!? マスターから許可取ってきて頂戴ハノルメっ!!』って騒い……」
「絶対に行くなってルチアロに伝えとけ」
「……はぁい。ま、ルチアロの事やからあの手この手で神々の愛し子に仕返しとかしそうやけどな」

 ハノルメはなるようになれと言わんばかりに笑うが、全くもって笑い話ではない。ルチアロなら確かにどんな手段を用いてでも神々のお気に入りに制裁を加える恐れがある。それだけあの女は光の魔力を持つ子供達を愛している。
 …………だがしかし、だ。相手は非ッ常に困った事に神々のお気に入りだ。ボク達精霊が手を出してはあのジジィ──……ごほんっ、神々がボク達にまぁた干渉する理由を与える事になる。

 最悪の場合、制約にまた変な項目を増やされて破棄が難しくなる恐れだってある。それは不味い。
 後一年あれば三項目ぐらいはとりあえず破棄出来そう、なんて困難っぷりなのに……それが更に増すとか冗談じゃない。制約の全破棄は不可能だから、一つずつとにかく邪魔な項目から破棄していこうと上座会議で決議したけれど。それですら時間がかかって仕方ない。

 それなのに神々に妨害されて更に手間取る事になった日には……気が触れたのかってくらい暴れ倒す自信がある。だから何としてでもルチアロを止めないと。
 ふぅぅ……っ、と竜の息吹のようなため息を吐き、ボクは両肘を机に立てて口元を手で覆った。

「ハノルメ、ルチアロを何とかしろ。あのジジィ共にこっちに付け入る隙を与えるな」
「ゲランディオールも巻き込んでええ?」
「好きなだけ他の精霊を巻き込んでいい。ルチアロがどんな手段を用いてでも制裁を加えるつもりなら、こっちはどんな精霊達を巻き込んででも止めてみせるまでだ」
「おっけ〜。やれるだけの言事はやってみるわぁ」

 少し戦力過剰かと思うやもしれないが、如何せんルチアロは数いる最上位精霊達の中でもトップクラスの能力を持ち、精霊位階という最上位精霊達のちょっとした序列みたいなのでは、エンヴィーとゲランディオールを差し置いて一位に君臨する程の戦闘能力の高さを誇る。

 まあ要するに。ルチアロが本気で暴れだしたら割と収拾がつかないレベルで、あの女は強いのだ。そんなルチアロを止められるとしたら、それは恐らくボクか闇の最上位精霊のゲランディオールぐらいだろう。

 だからハノルメもゲランディオールを巻き込んでもいいかと聞いてきたのだ。ルチアロと戦うのならゲランディオールの助力が必須だと分かりきっているから。
 そしてボクはそれを許可した。それどころか好きなだけ精霊達を巻き込めと命令した。さしものルチアロと言えども、何体もの最上位精霊を同時に相手取るのは至難の業。多分何とかなるだろう。

 水晶玉を手にハノルメが退出し、部屋にはまたボクとエンヴィーだけとなる。カリカリとペンを動かしながらボクは「そういえばさ」と切り出した。

「多分なんだけど……アミィも持ってると思うんだよね」
「持ってるって、何をっすか?」
「加護属性《ギフト》」
「加護属性《ギフト》っすか」

 エンヴィーと目が合う。暫くじっと見つめ合っていたのだが、ついにエンヴィーが時間差で反応を見せた。

「はぁああああああああああ!? え、えぇ?! 姫さんが加護属性《ギフト》を?!!!」

 バアンッ! と机を叩いてエンヴィーは立ち上がった。その拍子に机にあった書類は吹き飛び、彼の座っていた椅子は後ろに倒れている。
 そんなに驚く事かな、これ。
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