だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
 そして、一度本編を終わらせた上で全ての暗殺成功CGを見た後に解放されるアミレスのSS【親愛なる、お父様へ】が、アンディザファンの間で話題となったのだ。
 ゲームはヒロインの視点で繰り広げられる為、ヒロインが死んだ後の事は分からない。アミレスのSS【親愛なる、お父様へ】はミシェルちゃんが死んだ後の話だった。
 ミシェルちゃんを殺した後アミレスがどうなったのか…………アミレスという悲しき少女がどれだけ純粋な思いで血の滲むような努力を重ね、そして非業の死を遂げたのかを知って……誰もアミレスを憎めなくなった。
 『あんな面倒臭い作業をさせやがって』と恨みはしたが、憎めなかった。本編の長さから考えるととても短い話だったが、そこからアミレスの純粋な思いを感じ取れてしまったから。
 愛する親の手によって殺されるその時まで、愛されたかったと願う少女。帝国の王女なんて異様な肩書きよりも、悲運の王女と呼ぶ方が似合うとアンディザファンをして言わしめた程の敵キャラ。
 それが、私が転生したアミレス・ヘル・フォーロイトなのだ。

 これはアンディザのファンブックの書き下ろしSSの内容なのだが、アミレスが暗殺に失敗した場合…ハミルディーヒ王国に潜入したアミレスに同行していた皇帝の側近が、アミレスを始末した。
 そのSS【大好きな、お父様へ】の内容は、

『な……どうして、ですか…まだ、まだ私は…』
『皇帝陛下の命令です。無能な人形は早々に廃棄してしまえと』
『──っ……そん、な……ごめ、ん……なさ……い……おと……う、さ…………っ』
『あの御方は、貴女を娘と思った事などありませんよ』
『……』
『もう、聞こえて無いか』

 少し要約したが、こんな内容だったと思う。本当に酷い話だ……アミレスは暗殺が成功しようと失敗しようと悲しい死を迎える。
 それなのに決して父親や兄や祖国を恨まず、ただ愛されたかったと思う切ない少女に……私は涙した。
 そりゃあ、ミシェルちゃんを殺した事は許せなかったし作業も面倒臭かったのだけれど、それすらもどうでもいいとなるぐらい、アミレスの結末が可哀想で仕方無かったのだ。
 そして今、私はそのアミレスになってしまった。このままゲームに沿って生きていけば、皇帝によって殺されるバットエンドが待ち受けている。またこの世界の中心たるミシェルちゃんが選んだ世界線(ルート)によっては兄に殺されるバットエンドだってある。それは断固阻止、だ!
 それに……私はアミレスに幸せになって欲しいと思っていた。神や仏に願ったし、公式にも願った。
 もしかしたら、私の願いを神が叶えようとしたのかもしれない。アミレスのままのアミレスだときっとバットエンド直行だから、アミレスじゃないアミレスにすればいいだろみたいな? かなりねじ曲がった願いの叶え方ではあるが、まぁそこは気にしない。
 中々に強引な話ではあるが、こうとしか考えられない。アミレスの幸せを願う私がアミレスに転生するなんて……やはりそうとしか考えられない。
 異世界転生じゃないって一瞬落ち込んだけれど、剣も魔法もある世界なのだから全然良いわ。幸せになる為にもそれらにも取り組もうじゃあないか。
 悲運の王女に転生したんだし、私は私なりのやり方でハッピーエンドを掴み取ってみせる。
 絶対に幸せになってやるわよ、私は!
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