だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「皆さん知っての通り、今日、ついにあの計画を実行する事となりました。きちんと手筈通りに動いて下さい」

 彼等には事前に当日の流れを説明していたので、私はそう簡潔に伝えたのですが……予想以上に彼等が狂喜乱舞でして。

「やっとお嬢が正式な主になってくれる時が来たんだね? あの豚にもう頭を下げなくていいと思うと気ィ楽だわ」

 カラスの現隊長たる女傑、アンドレカが首をボキボキと鳴らしてそう呟くと、

「宴だ宴!」
「やった〜〜!」

 まず最初に大柄の筋肉男、ジューイと宴好きの小柄な女、モルコが手を振りあげて喜び、

「やっと本業に専念出来る……っ」
「ようやくあの豚から解放されるのか、よかったよかった」

 次にずっと東宮の手伝いをさせていたゼルと、黒髪を後ろに流す紳士風体の男、カラスの副隊長たるキーラァが心底ホッとしたように肩を撫で下ろしていた。
 そうやって次々にワイワイと騒ぎ出すカラス達。豚って……あの屑、また太ったのでしょうか。
 私が最後に見たのは八年前ですから、それだけあればあの典型的な馬鹿が更に豚になっていようとなんらおかしくはないですが。と最後に見た忌まわしき男の姿を思い浮かべる。

「一応、まだあの無能が皆さんの主なのですから。そう悪く言ってはなりませんよ」

 それはともかく。まだ正式な契約更新とはいってないのですからあまり不用意な発言はしないように……と窘めると、

「いやいや。僕達十年以上前からお嬢に忠誠誓ってますんで? あんな役立たずの豚、誰が尊重するんだって話ですよ」
「……事実でも言ってはならない事もあるんですよ。どれ程の無能変態の屑豚野郎と言えども、あの男には権力があるのですから。世の中正論だけではやっていけないものですし」
「はは、おじょーもボロクソに言ってんじゃん」

 顔に傷のあるヘラヘラした男イアンが顔の前で手を左右に振り、掴み所の無いふわふわとした男シードレンが楽しそうに笑っている。
 私はあの男が大嫌いというか……世が世なら自ら殺していたぐらいには憎んでますからね。あんな男と半分でも血が繋がっている事が嫌で嫌で仕方ありません。

 ですが……母の子として産まれた事には一切後悔などありません。私は母が大好きでしたので。だからこそ母を不幸にしたあの男が許せないのですが。

「とにかく。第一班はランディングランジュ邸付近にて待機、第二班はララルス邸内にて待機。何があっても、貴方達がララルス侯爵家の諜報部隊《カラス》であると気づかれぬよう……気をつけなさい」
「はっ!」

 気を取り直して話を戻すと、カラス達は一糸乱れぬ動きで敬礼し、瞬く間にその場から消えた。彼等にはとある役目を任せていたのです。
 カラスは諜報部隊ではありますが、その戦闘能力も帝国騎士団に勝るとも劣らない実力。ララルス侯爵家の正式な騎士団よりもずっと上の実力を持つ集団、それがカラスなのです。
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