だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜

151.動乱に終幕を3

「問題ありません。元より朝はあまり食べないので……」
「そうなのか、それは出過ぎた真似をした。もし足りなければ遠慮なく頼んでくれ、ここの店の料理はとても美味しいんだ」
「その時はそうさせていただきますわ」

 メニューを横に避け、私が返事すると。シャンパージュ伯爵は満足気に微笑みを浮かべた。なんというか、何度見ても底知れない笑顔ですね……シャンパージュ伯爵のそれは……。
 なんて考えているうちに頼んだものが運ばれて来ました。そこで私は自分の目を疑いました。私が頼んだフルーツサンドは予想していたよりもずっとボリューミーだったのです。

 パン生地に挟まれた溢れんばかりのフルーツとクリーム。甘い香りを漂わせるそのサンドは、思い切り口を開けても私の口には入らなさそうぐらい分厚い。そして大きい。なんとそれが四つ程ある。
 …………多いですね。そもそも少食な私が、朝にこれだけの量を食べ切れるのでしょうか。朝からこんなにも甘いものを食べては胃もたれ確実ではありませんこと?

 よくよく見るとシャンパージュ伯爵の頼んだモーニングセットも朝からその量を? とついつい口をついて疑問が飛び出てしまいそうなボリュームをしていますね。それはもう昼食の量では?
 パンは大きく、スクランブルエッグは何故か山盛り。その傍らにて美しい脂を纏うベーコンは厚く大きなものが何と五枚も。スープは一般的なカップ一杯分のようですが、湯気が凄まじい。デザートに関しては、最早それが主役なのではと疑いたくなる程の主張の激しさを誇る、華やかなケーキですね。

 いやおかしいですわ。朝から食べる量ではないでしょうそれ。食べ盛りの少年や騎士や兵士ならまだしも、シャンパージュ伯爵のような方が食べるには量が多過ぎるのでは??
 運ばれて来た目の前の料理に唖然とする私とは違い、シャンパージュ伯爵は「相変わらずここの料理は美味しそうだ」と、どこかメイシア嬢が思い浮かぶ無邪気な笑みを浮かべている。
 量については特に何も言葉が無いのですか……? と、呆然とする私に気づいたシャンパージュ伯爵が神妙な面持ちを作った。

「食べないのか? ララルス嬢。はっ、やはり足りないのでは……たったそれだけでは足りないのでは?」

 いえ違います、多いのです。十分過ぎるのです。と戸惑いつつも首を横に振る。

「む? ああそうか」

 分かっていただけましたか! とシャンパージュ伯爵を期待に満ちた目で見つめると。

「毒味をしてないからか。だが安心してくれ、この店では毒などの異物混入が発生しないよう予め魔法が仕掛けられている。だからその心配はしなくていい」

 シャンパージュ伯爵はキリッとした商人の面持ちで宣言した。
 違います!! その取り組みは素晴らしいと思いますがそうでは無いのです! 明らかに料理の量が多いのです!!
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