だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
 どんな事情があろうと、シャンパージュ伯爵程の方が身内でもない女性と馬車に二人きり……というのは些か外聞が良く無いので、どうせ一人は変わらず私についている事だろうと、カラスを呼んでみました。すると予想通り一人出てきたのです。
 ……咎めるつもりはありません。元より、どのような命令を与えても必ず一人は私の付近に残すのが彼等のやり方らしいので。その辺はよく理解しているつもりです。
 そうやって出てきたカラスの一人、イアンにも共に馬車に乗るよう言いつけ、私達は三人で馬車に乗りララルス邸に向かいました。
 車内で幾らか話しているうちに、聞き役に徹していたイアンが珍しく挙手し、一つの妙案を口にしたのです。

「お嬢、これはあくまでも一個人の意見なんですが……そんなにもあの豚共と血が繋がってるのが嫌だって言うのなら、全員殺してしまえばいいんじゃないですか?」

 シャンパージュ伯爵が「おおお〜」と感嘆の息を漏らして拍手する。そして私もまた、それには素直に感心していました。
 何故、こんなにも簡単な方法をこれまで思いつかなかったのでしょうか。それが不思議でなりません。

「とても良い意見です。ありがとうございます、イアン。貴方は頼りになりますね」

 盲点だったその意見を積極的に採用する事にした私は、感謝を伝える為に横に座っていたイアンの手を握り、彼の下がり目を見て感謝を口にする。
 姫様が以前仰ってました。どれだけ些細な事でも感謝の言葉は相手の目を見てちゃんと伝えなければならないと。それが人間の成せる最高の美徳なのだと。
 私は姫様の教えに忠実に従い、こうして感謝の気持ちを伝えたのですが、

「えっ? ま、まぁ……他ならぬお嬢の事ですし。僕もお嬢の為なら何だってするって言うか……お嬢に頼って貰えるのが一番って言うかァ……」
「貴方達にはいつも頼り過ぎている自覚があるのですが」

 当のイアンは緊張でもしているのか、どこか張り詰めた面持ちで視線を泳がせている。確かに目の前にはシャンパージュ伯爵がいらっしゃるのですから、イアンが緊張するのも無理はありませんね。
 ああほらやはり。脈拍も早くなり、発汗も見られます。頬も少し赤くて……イアンはかなり肝が据わっていると、彼とは長い付き合いである私は思っていたのですが……意外と緊張とかする人だったとは。
 彼等とは十年来の付き合いですが、これは新しい発見ですね。
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