だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「客人の前で無様な姿を晒さないでくださいまし、侯爵様。この御方はシャンパージュ伯爵なのですよ」
「ああどうも、ララルス侯爵。ホリミエラ・シャンパージュです」
「なっ、何だ急に……だが確かにシャンパージュ伯爵の前でこれは流石に失礼か。何をしておるのだ、フルカ。疾く準備せんか。マリエルが我が元に戻って来た祝いも後でせねばならん」

 随分と丸く肥太った体で偉そうに命令を飛ばす屑を見て、シャンパージュ伯爵が口元を押さえたまま「くくっ……」と小さく笑ってらっしゃった。急にどうしたのだろうと横目で彼の様子を眺めていると、「何と滑稽なのだろうか」とシャンパージュ伯爵がボソリと呟いた。

 それには同意致しますわ。「八年前より一回りか二回り程太ってますわよ、あの豚」と小声で呟くと、シャンパージュ伯爵は「フフッ、実に容赦のない言葉だ」と楽しげに返事を返してくださりました。
 随分と上質なガウンを着て屑が着替えの為に寝室を出ようとした時、何故か私の体に触れようとして来たので当然それは避け、私は真顔かつ無言で屑を見送りました。

 その後に続くようにフルカが「準備が終わり次第改めて向かいますので、応接室でお待ち下さい」と眉尻を下げて言い残し、寝室を出て行ったので、私達は応接室に向かいますか。と扉に手をかけ……る前に一度踵を返しまして。

「な、何よ……あんたもこの家のお嬢様なの?」
「悪い事は言いません、あの屑と関わるのは止めなさい。百害あって一利なしですよ、あのような豚……いえ、豚は人間の糧となるのでこれでは豚に失礼ですね。人間の糧にもならない屑ですので、あの男は」

 布団で体を隠す美女を見下ろし、私はあの屑との関係を断つようお勧めしました。そこはかとなく、僅かにではありますが母とどこか似た雰囲気の彼女がこれ以上あの屑の犠牲となるのは、私としても少し夢見が悪いのです。
 まあそもそも、近々あの屑には消えて貰うのでその為でもありますが。
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